「歩くスキー」と「健康」をつなぐ

スポーツがつなぐ絆
歩くスキーの普及を軸に、1年を通した健康づくりを楽しむ

特定非営利活動法人北海道歩くスキー協会 顧問 清野守(せいのまもる)さん

歩くスキーは、誰もが気軽に始めることができ、ゲレンデスキーのように斜面を下るだけでなく、平地・登りも体験ができ、ポールを使う事で全身運動となり、健康的に心地よく汗をかくのにぴったりなスポーツです。みんなが笑顔になれるこのスポーツを43年間支えてきた団体があります。「歩くスキー」を生涯スポーツとして次世代へとつなげたいー。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人北海道歩くスキー協会
顧問 清野守(せいのまもる)さん

30年ほど前より協会に加入。2005年から2016年までの11年間にわたり事務局長を務め、現在は現職で協会の活動をサポートする。

社会への感謝の想いから生まれ、つながっていく活動

―特定非営利活動法人北海道歩くスキー協会を設立したきっかけを教えてください。

 1972年に開催された冬季オリンピック札幌大会を機に、クロスカントリースキーのオリンピックや国体の元選手たちが中心となって、クロスカントリースキーの普及ために、大会などの運営に動き出し、1974年に当団体の前身である「北海道トリム札幌歩くスキークラブ」として活動を立ち上げました。
 活動のきっかけは社会への感謝の想いからでした。自分たちが競技者としてここまで強くなることができたのは、これまで応援してくれた社会のお陰。その想いを少しでも社会に還元したい。大会開催の運営に必要な費用や会場までの移動費を自分で負担してでも、この活動をやり遂げたい。その後、1977年に「北海道歩くスキー協会」と改称し、2008年にNPO法人格を取得しました。
 なお、クロスカントリースキーという競技名で認知されていたこのスポーツを、日本人にも受け入れやすくするために「歩くスキー」と初めて公言したのは「北海道トリム札幌歩くスキークラブ」です。

―歩くスキーの魅力は何ですか?

 老若男女を問わず誰でも気軽に始められ、無理なく健康づくりができることが最大の魅力です。ゆっくりとですが体中の筋力を使うので、冬でもしっかり汗をかいて「気持ちいい!」という爽快さを味わえます。以前、おじいちゃん、おばあちゃんからお孫さんまでの三世代で参加されている家族をよく見かけましたが、最近は少なくなりました。それぞれのペースで歩くスキーを楽しむことが、家族間でのコミュニケーションにもつながり、健康にもつながるので、全ての世代にこの魅力を知っていただきたいと思います。

春夏秋冬、年間を通して楽しめる活動

―活動内容を教えてください?

 主な活動内容は、大きく分けて三つです。
 一つ目は、団体のメイン活動でもある「歩くスキー」の実践の場の提供です。初めて「歩くスキー」を体験する子ども向けのイベント「道新Jr歩くスキー教室in中島公園」では、歩くスキーの履き方や準備体操などを、親切丁寧に指導します。最初は上手く歩けなくても子どもはすぐに上達し、最後に行うミニレースでは笑顔で歓声があがる様子が印象的です。

(写真左)歩くスキーの履き方や準備体操などを、親切丁寧に指導(写真右)イベント最後に行うミニレースは、見守る保護者からの歓声で大盛り上がり! (写真左)歩くスキーの履き方や準備体操などを、親切丁寧に指導(写真右)イベント最後に行うミニレースは、見守る保護者からの歓声で大盛り上がり!

 また、立ち上げ当初より43年間継続して開催している、当協会の一大イベントでもある「道民・札幌市民歩くスキーの集い」では、豊平区西岡にある「オリンピック記念距離競技場」で第1回が開催され、歩くスキーの大会としては全国で一番歴史が長い由緒ある大会です。初心者の方にも参加していただきやすいように、希望があればスキーの滑り方の指導も行っています。道具の貸し出しも行っているので、防寒準備さえしていれば、手ぶらでもイベントを楽しむことができます。
 数年前、関西から転勤で札幌に来られて参加された女性は、全くの未経験の方でしたが、指導員のレクチャーを受けた後は、歩くスキーで坂を下ることができるようになり喜んで帰られました。どなたでも希望があれば指導を受けることもできますので、スキーに馴染みのない方でも、ぜひ参加してください。
 二つ目は、健康・体力づくりです。冬は歩くスキーで平地や上り坂等のコースを走ることで、体力をつけ、それ以外の春、夏、秋は、札幌市近郊でのウォーキングや軽登山などを楽しんでいます。「自然と向き合う」と本当に心が癒されます。日常生活からはほど遠い世界へ一歩足を踏み入れれば、そこには気持ちのよい空間が広がっています。

(写真左)自然の中で腕力・脚力を存分に使い、爽やかな汗を満喫。(写真右)大会では講師によるデモンストレーションも。 (写真左)自然の中で腕力・脚力を存分に使い、爽やかな汗を満喫。(写真右)大会では講師によるデモンストレーションも。

 三つ目は環境保全、周辺美化活動です。2006年以降は、毎年1回環境保護講座を開催しています。これは自然が守られているからこそ毎年の降雪があり、雪があるからこそ団体のメインの活動である歩くスキーができるという考えから、「環境を守ることへの啓発・普及もやるべき」と考え実施しています。
 その他、2005年からは社会貢献の一助として、救命救急講習会を実施しています。以前、あるスポーツ大会にボランティアとして参加していたメンバーが、倒れた選手の救命処置を、救急車が来るまで行ったことがありました。スポーツに携わる団体として、このような知識の必要性を感じたからです。

―運営にはどのような方が関わっていますか?

 現在は、正会員44人と一般会員49人の計93人と、1団体のご協力をいただいて活動しています。会員全体の年齢層も上がってきているので、ぜひ若い方にも積極的に参加していただきたいと願っています。

若い世代とのつながりで歴史を紡ぎたい

―活動を続ける上で、今後の課題はありますか?

 これまでの活動を続けていくために、ぜひ若い方たちにも活動に参加していただきたいです。今は昔と違って子育て世代の方も共働きが多く、週末も忙しいという状況があると思いますが、せっかく雪のある札幌に暮らしているので、ぜひ一度当団体の活動に参加して、楽しみを共有していただければ嬉しいです。
 また、より多くの方が団体に参加できるような素地をつくるためにも、寄付や協賛などの協力をお願いしながら、歩くスキーの普及促進をしていきたいと思っています。

特定非営利活動法人北海道歩くスキー協会 (団体ページへ)

特定非営利活動法人北海道歩くスキー協会
■ 住所 札幌市中央区南8条西2丁目5-74
■ 電話・FAX 011-532-7160
■ メール h_arukuski@yahoo.co.jp
■ 時間 10:00~17:00(火曜・水曜・金曜・土曜)
■ ホームページ http://h-arukuski.sakura.ne.jp/

今後の開催予定

毎年1月に「道民・札幌市民歩くスキーの集い」、毎年2月に「道新Jr 歩くスキー教室 in 中島公園」を開催。また「環境保護講座」を2018年5月20日(土)開催。最新情報はホームページへ。問い合わせはメールや電話、FAXで受け付け。

取材を終えて

団体の設立当初に関わられた方々の「社会に育てられたことに感謝」という想いが、現在の活動につながっていることに強く感銘を受けました。無理なく誰もが健康的に楽しめる「歩くスキー」が札幌に住む自分の身近にあることを感じ「子どもが成長したら家族で体験してみたい」という気持ちになりました。せっかく札幌に住んでいるのですから雪をもっと楽しみたいと改めて感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2018年3月12日現在の情報です。