「スポーツ」と「障がい」をつなぐ

スポーツがつなぐ絆
一人でも多くの人がスポーツを楽しむ笑顔の輪を広げたい

特定非営利活動法人Mirriso(ミリーソ)スポーツ 理事長 豊川大地(とよかわだいち)さん

障がいの有無だけでなく、年齢や性別、競技の垣根を越え、全員が同じユニホームを着て「スポーツ」を楽しむという総合型スポーツクラブを目指した取り組み。スポーツで笑顔の輪を広げたいー。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人Mirriso(ミリーソ)スポーツ
理事長 豊川大地(とよかわだいち)さん

札幌で活動する総合型スポーツクラブSafilva(サフィルヴァ)代表。高校3年生でフットサルを始め、卒業後は介護職に従事しながらフットサルチームに所属する他、エスポラーダ北海道でのプレー経験を持つ。2013年にSafilvaの運営団体として特定非営利活動法人Mirrisoスポーツを設立、理事長とコーチを兼任するほか、北海道コンサドーレ札幌U-12など他のチームでも指導にあたる。

理想は、子どもも大人も競技も関係なく皆がスポーツを楽しむ環境

―特定非営利活動法人Mirrisoスポーツを設立したきっかけを教えてください。

 私は高校3年生の冬にフットサルを始め、卒業後に現在運営しているスポーツチーム「Safilva(サフィルヴァ)」の前身である「C.R.B Safilva」というフットサルチームに所属していました。2010年にエスポラーダ北海道に移籍し、2年間活動を続けていましたが「一人でも多くの人がスポーツを楽しむ笑顔の輪を広げたい」という想いから退団しました。Safilvaはもともと大人だけのフットサルチームでしたが、子どもたちを対象とした下部組織を作りたい、障がい者のスポーツに関わりたいと考え、2013年にこの法人を立ち上げました。その後、「精神障がい者フットサルに関わってほしい」と声をかけられたことがきっかけとなり、障がい者スポーツを調べるうちに電動車椅子サッカーにたどり着きました。「障がいの有無だけでなく、年齢や性別に関係なく、皆にスポーツを楽しんでもらいたい」と考え、設立当初から電動車椅子サッカーの活動を続けています。

(写真左)1チーム4名、子どもから大人まで男女混合で行う電動車椅子サッカー。(写真右)直径32.5cmのボールを使用し、フットガードを取り付けた電動車椅子を操りながらプレーする。 (写真左)1チーム4名、子どもから大人まで男女混合で行う電動車椅子サッカー。(写真右)直径32.5cmのボールを使用し、フットガードを取り付けた電動車椅子を操りながらプレーする。

―「総合型スポーツクラブ」とはどのようなものですか?

 私自身が過去にブラジルやスペインを訪れた際に知った、町ぐるみで形成されたスポーツクラブがモデルとなっています。日本ではサッカーや野球など競技ごとのチームで活動するのが普通ですが、サンパウロではさまざまな競技が一つの町のクラブ内に存在し、子どもも大人も競技も関係なく皆が同じユニホームを着ている光景を目にしました。「日本でもそのようなスポーツクラブがあれば」と考え、Safilvaを複数の競技や障がい者スポーツ部門がある総合型スポーツクラブとしました。子どもも大人も障がい者も入り口は全て一緒で、興味に合わせてスポーツを自分で選べるようにしたいと考えたのです。現在は4つの部門があります。幼児から大人までのフットボール部門、障がい者スポーツ部門、メディカルトレーナー部門に加え、2017年からは小学生から大人までのバレーボール部門を新たに設けました。障がい者スポーツ部門には、電動車椅子サッカーとパラカヌー(パラウントカヌー・障がい者カヌー)のチームがあり、それ以外に精神障がい者フットサルとアンプティサッカー(主に上肢、下肢の切断障がいを持った選手がプレーするサッカー)では、指導者の派遣や啓蒙活動を行っています。トレーナー部門には、現役の理学療法士やアスレチックトレーナーなど各競技のトレーナーが在籍しています。子どもの育成と強化を目的とし、競技の垣根を越えてそれぞれの情報を共有してほしいと考え、あえて競技ごとではなく、トレーナー部門を設けています。その他にも基礎運動能力を向上させるため、整骨院を併設したSafilvaスポーツラボがあります。指導にあたるコーチを含め、合計約10人のスタッフで活動しています。

「スポーツ」と「障がい」をつなぐ電動車椅子サッカー

―「スポーツ」と「障がい」をつなぐきっかけを教えてください。

 もともと私が障がい者介護の仕事をしていたこともあり、障がい者スポーツに関わりたいという想いがありました。エスポラーダ北海道に所属していた際にも、障がいを持つ人々にもっとフットサルを見に来てもらいたいと考えていたのですが、選手を続けながらの活動というのは難しく、退団をきっかけに障がい者スポーツに取り組もうと決意しました。私にとって、スポーツは「楽しむもの」です。「皆が楽しめるスポーツを提供したい」「もっと障がいを持つ人々にもスポーツを楽しんでほしい」というのが願いです。他にも障がい者スポーツに関わる団体は多数ありますが、総合型スポーツクラブとして、二種類以上の障がい者スポーツ競技に取り組んだのはSafilvaが日本で一番最初でした。これはスポーツを広い視野で捉えているからこそだと思います。特に、障がい者は自分にどんなスポーツが向いているのかが解らないことが多いため、まずはそれぞれの競技を知った上でスポーツを選べるということは最大のメリットだと思います。

(写真左)フットボール部門の小学生が電動車椅子サッカーの選手と一緒に交流するイベント。(写真右)電動車椅子サッカーを通じて障がい者と触れ合うことで、子どもたちの考え方や感じ方が変化。 (写真左)フットボール部門の小学生が電動車椅子サッカーの選手と一緒に交流するイベント。(写真右)電動車椅子サッカーを通じて障がい者と触れ合うことで、子どもたちの考え方や感じ方が変化。

―「スポーツ」と「電動車椅子サッカー」のつながりとは?

 電動車椅子サッカーのチーム内に、先天的に足に障がいを持つ選手がいるのですが、「足は動かないけれど、サッカー選手になりたい」と練習を重ね、試合で活躍しています。また、Safilvaでは電動車椅子サッカーの選手とサッカーやフットサルのチームに所属している小中学生の子どもたちが交流するという機会があります。それによって、子どもたち自身も「自分たちがサッカーができるということは当たり前のことではない。足が動かなくてもサッカー選手になりたいという想いで頑張っている選手がいるから自分も頑張ろう」と実感することにつながります。電動車椅子サッカーの選手も子どもたちも皆同じユニホームを着て、同じスポーツを一緒に楽しむ様子を見ていると、設立当初に描いていたものが少しずつ形になってきていることを実感でき、私にとっても非常に励みになっています。

さまざまなスポーツに触れ合える機会を提供したい

―今後の目標や課題は何ですか?

 地域の総合型スポーツクラブとして、フットボールやバレーボール以外の部門を増やし、現在取り組んでいる障がい者スポーツ競技以外にも種目をもっと増やしていくことが目標です。しかし、ただ単純に活動している種目数が多くてもチーム自体が弱ければ意味がないと考えています。そのため、各部門で競技力をつけながら色々な種目を増やすことを目指しています。その他、子どもを対象としたスクールは現在競技ごとに分かれていますが、幼児対象のクラスをあらゆるスポーツの基礎となる運動能力を高めるような内容にすることで、そこから自分で好きなスポーツを選べるような仕組み作りをしていきたいです。また、これまで障がい者スポーツに関するイベントに参加してきましたが、今後はそのようなイベントを自ら企画し、電動車椅子サッカーだけに限らず、もっと障がい者がさまざまなスポーツに触れ合えるような機会を提供していきたいと考えています。

特定非営利活動法人Mirriso(ミリーソ)スポーツ (団体ページへ)

特定非営利活動法人Mirriso(ミリーソ)スポーツ
■ 住所 札幌市中央区南22条西9丁目1番36号
■ 電話・FAX 011-206-4222
■ メール info@safilva.com
■ ホームページ https://www.safilva.com/
■ Facebook https://www.facebook.com/Safilva-363261553775689/
■ twitter ID @safilva
■ Instagram ID safilva

今後の開催予定

電動車椅子サッカー部門は、積雪期を除く毎年3月~12月に週1回の練習を行い、大会にも出場。見学や体験のほか、障がい者スポーツに関するイベントや電動車椅子サッカーのデモンストレーションの依頼を随時受け付けている。活動を支えるパートナーやサポーターも募集中。詳細は団体ホームページまたは各種SNSへ。問い合わせ、申し込みはホームページのフォームまたはメール、電話で受け付け。

取材を終えて

「スポーツで笑顔の輪を」というMirrisoスポーツの理念には、年齢や性別、障がいの有無、競技に関わらず、皆がスポーツを楽しんでほしいという願いが込められています。違う競技の試合にもメンバーが駆けつけ、全員が同じユニホームを着用し、チーム一体となって応援するということがとても印象的でした。あらゆるカテゴリーを越え、お互いが切磋琢磨しながら皆で成長し合うという「スポーツがつなぐ絆」を強く感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年12月22日現在の情報です。