野球を通して、子どもたちの未来に夢と感動を与えたい
野球を愛する全ての人が、安心して野球に打ち込める環境を作りたい。子どもたちに、“球を打つ、投げる”楽しみを知ってほしい―。その想いを伺いました。
特定非営利活動法人北海道野球協議会
理事長 柳俊之(やなぎとしゆき)さん
社会人野球チーム電電北海道(NTT北海道・2006年解散)で選手・監督を経て、現在、公益財団法人日本野球連盟副会長を務める。2000年に北海道野球協議会を発足し、2003年4月にNPO法人の認証を受け、特定非営利活動法人北海道野球協議会を設立、理事長を務める。
野球を愛する全ての人が、野球を楽しめる環境を作りたい
―特定非営利活動法人北海道野球協議会を設立したきっかけを教えてください。
北海道には1970年代頃から複数のアマチュア野球の組織がありましたが、それらの組織を取りまとめる団体が無かったため、全国規模の野球大会を開催することができませんでした。そこで各組織をまとめ、野球を通して青少年の健全な育成を図ることを目的に2000年に協議会が発足しました。2003年4月に、幅広い活動資金の調達と他スポーツ団体との交流や支援、そのための共同事業などを円滑に行うため、特定非営利活動法人となり、子どもたちや野球を愛する全ての人が安心して野球に打ち込める環境づくりに取り組んでいます。現在は、市内のプロ野球球団も当団体の一員となっており、プロ・アマ一体となって野球振興に努めています。
野球を通じて、地域の活性化と人材育成を目指す
―現在の活動内容を教えて下さい。
安心して野球に打ち込める環境づくりのため、大きく分けて四つの活動を行っています。
一つ目は環境の整備に向けた活動です。現在、北海道のアマチュア野球人口は札幌を中心として約10万人います。しかしながら、札幌市には、公式大会を開催できる球場が円山、麻生、札幌ドームの3カ所しかありません。降雪地の特性上、野球のできる期間は1年の半分に限られる上、円山と麻生にはナイター設備がないため、使用できる時間帯も限られることから、大会が集中すると野球団体による激しい争奪戦が起こっています。その結果、札幌市内の球場は、年3回の高校野球の大会に加え、社会人と大学生の使用が大半を占め、小中学生は大会に出場するため市外へ遠征しなければなりません。また、冬期間に野球の練習を行うことが出来る屋内トレーニング施設が少ないことも、小中学生が野球を続けていくことを困難にしています。球場の新設と北国のハンディキャップを克服する屋内トレーニング施設の建設は、子どもたちに希望を与えることにつながります。これらの施設は、野球以外の競技においても活用可能で、さまざまなスポーツのレベルアップ、地域の活性化にもつながると考えています。イベントの際や、HP上で活発に野球場新設の署名活動を行っているところです。
二つ目は、野球を楽しむイベントの開催です。小学校入学前のお子様を対象にボールを「打つ・投げる」楽しみを知ってもらうために、ティーボール(※)競技の普及活動を積極的に行っています。毎年8月に、札幌円山球場で当団体に加盟している団体の子どもたちやその家族を対象に、『ベースボールフェスティバル』を開催しています。ティーボール教室や、ホームラン競争、パン食い競争などのアトラクション、各世代別の交流試合や高校球児OB戦など、3日間にわたる一大イベントになっています。
(※)野球やソフトボールに類似したボールゲームで、バッティングティーにボールを載せ、その止まったボールを打つことから始まるゲーム
三つ目は、子どもたちがより安心して野球を続けられるよう、指導者や審判員の質の向上を目指して、指導者・審判員の育成のための講習会やアナウンス講習会を行っています。特に、指導者や審判員の人材育成は急務だと考えています。これは野球界全体の問題でもあるのですが、さまざまな団体がバラバラで与えていた資格などを一本化して、体系づくりをしようと動いています。これにより、指導者や審判員の質が向上し、子どもたちへ継続的により良い環境を与えていけることになるからです。例えば、ケガをして選手としては活躍できなくなっても、指導者などの道に進んでいけば、これまでやってきたことが活かされるというような包括的な仕組みづくりをしていきたいと思っています。
アナウンス講習会は、2017年に初めて、北海道高等学校野球連盟に所属する、10校のマネージャー24人を対象に行いました。プロ球団に所属している場内アナウンサーを講師に迎え、座学と練習試合での実技を合わせて、アナウンス技術の向上を目指すものです。参加者からは、「このような機会はなかなかないので、とても勉強になった」と大変好評でしたので、続けていきたい取り組みの一つです。
四つ目は、検診活動です。野球を続けていくには、健康管理が欠かせません。市内の小中学生を対象に、毎年11月・12月に検診活動を行っています。内容は、肘エコー検査、心エコー検査、理学検診、メディカル講習会です。検診は、医師や理学療法士など170人余りの体制で、骨軟骨障害などの早期発見を目的に実施しています。2015年度は受診者が700人を超えました。今後も検診を活用して健康管理に役立てて欲しいと思っています。メディカル講習会では、食事に関して正しい知識を持ち子どもたちのサポートをして欲しいとの想いから保護者にも参加して頂いています。
これからも野球を愛する人たちを支えていきたい
―今後の目標は何ですか?
今後は、これらの事業のさらなる充実を図っていきたいです。指導者や審判員の育成、これからの世代を守るための検診活動、施設の整備を訴える活動を通じて、野球を愛する全ての人が、安心して野球に取り組める環境をつくることが当団体の使命であり、目標です。野球は一人ではできません。選手のレベルアップだけでなく、競技を支える側の技術の向上、サポート体制の向上が全体を盛り上げていくことにつながります。今の子どもたちが大人になっても野球を思い切り楽しめるように、今後も加盟団体と協力しながら歩みを進めていきたいと思っています。
特定非営利活動法人北海道野球協議会 (団体ページへ)
■ 住所 | 札幌市中央区北4条西6丁目1番地 毎日ビル内 |
■ 電話 | 011-281-5589 |
■ メール | mail@npo-89kyougikai.or.jp |
■ ホームページ | http://www.npo-89kyougikai.or.jp/ |
https://www.facebook.com/pg/89kyougikai/ |
今後の開催予定
ベースボールフェスティバルの開催、小中学生等の野球教室の開催、小学校入学前の子どもへティーボールの普及と教室の開催、食の勉強会、指導者・審判員育成講習会の開催、など。問い合わせ、参加の申し込みはホームページの問い合わせフォームから、またはメール、電話で受け付け。
取材を終えて
野球は一人ではできない、一人ひとりが全体を支える、と語ってくださった柳さん。スポーツに打ち込んだ経験は大人になってからも大きな自信となり、人生を豊かにしてくれた、そんな想いが活動の原動力になっていると感じました。仲間と共に打ち込める事や、自分を磨ける環境が増える事が、子どもたちを大きく育てることにつながると感じました。
※2017年11月1日現在の情報です。