「スポーツ」と「ボランティア」をつなぐ

スポーツがつなぐ絆
札幌を拠点に冬のランニング文化振興を目指す

特定非営利活動法人ランナーズサポート北海道 事務局長 中村仁(なかむらひとし)さん

マラソン大会を運営する上で欠かせないボランティアをサポートし、大会に参加するランナーとボランティアがマラソンを楽しむことで、健康で活力ある地域作りのお手伝いがしたい―。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人ランナーズサポート北海道
事務局長 中村仁(なかむらひとし)さん

北海道新聞社が主催する「北海道マラソン」を運営する組織委員会に加わり、2011年5月の法人設立以来、ボランティアのとりまとめや支援活動を行う。自身も全国各地で開催されるマラソン大会に参加するなど、現在もランナーとして活躍中。ランナーとボランティアの両方の目線から大会の運営サポートを行っている。

全ては選手のために。スポーツボランティアの輪を広げ、つなげていきたい

―特定非営利活動法人ランナーズサポートを立ち上げたきっかけを教えてください。

 北海道では最大規模のマラソン大会である「北海道マラソン」をサポートしたいと思ったのがきっかけで2011年に法人を設立し、北海道マラソンの他、北海道のランニングやスポーツ文化の発展、スポーツボランティアの拡充や、主催者とランナーとボランティアをつなぐ役割を担っています。2015年からは、冬のマラソン大会である「北海道スノーマラソン」の主催・運営も行っています。

―活動について教えてください。

 当団体の活動は主に四つで、一つは、設立のきっかけとなった北海道マラソンの大会運営のサポートです。大会を運営する上でコース整理、給水・給食、ランナー受付など、ボランティアの力が必要不可欠です。大会当日の朝にボランティアの方へ全体説明を行うのですが、毎年ご参加いただいているベテランのボランティアの方々には、初めてボランティアに参加する方のフォローをお願いしながら大会を進めています。また、ランナーに向けて、完走の感動を記念にしてもらおうとゴール地点にある定点カメラで撮影したフィニッシュの画像をインターネットで配信する試みも行っています。2015年からは、北海道マラソンと社会貢献をつなげていこうと、ランナーに寄付金を募り、集まった寄付金を道内の「障がい・福祉」「自然・環境」「健康・スポーツ」「地域づくり」等の分野で活動する団体へ助成する「チャリティーエントリー制度」を取り入れました。海外では、このような走ることで社会貢献ができる仕組み、ドネーション(寄付)文化が根付いていますが、日本ではこれからと感じています。
 二つ目は、走り始めて間もない市民ランナーに向けての「北海道マラソン教室」です。北海道マラソンを無事に完走してもらおうと、毎年大学などから講師をお招きし、全4回にわたってトレーニング方法やレース戦略について座学と実技の講習会を行っています。マラソンは知恵のスポーツと言われ、用意周到なトレーニングとレース戦略が必要です。特に夏のマラソン特有の難しさを克服するためには、初夏から盛夏へと移り変わる仕上げ3カ月のトレーニングが鍵になります。“賢く走る”ための秘訣を学んで、見事完走してほしいと思っています。参加者からも、他の参加者と一緒に学ぶことでモチベーションがあがると毎年好評を頂いています。

(写真左)北海道マラソンでランナーにスイカを給食するボランティア。炎天下の中、ランナーと共に汗を流す。(写真右)「北海道マラソン教室」の様子。講師の話に真剣に耳を傾ける参加者たち。 (写真左)北海道マラソンでランナーにスイカを給食するボランティア。炎天下の中、ランナーと共に汗を流す。(写真右)「北海道マラソン教室」の様子。講師の話に真剣に耳を傾ける参加者たち。

 三つ目は、「北海道スノーマラソン」です。元々は、2012年から始まった「冬道ランニング」という講習会が始まりで、市内の中心部をコースに、冬でも気軽にランニングを楽しんでもらうことを目的とした大会です。毎年徐々に参加者が増え、2017年には、豊平区の八紘学園さんの敷地を会場として360人程が参加するイベントに成長しました。2018年は参加者数400人を目標にしています。シューズやインナーの性能が向上していますので、冬でもマラソンを楽しむ方が増えています。ランナーは夏に向けてコンディションを整えていきますので、冬にもこうした大会があればモチベーションの維持になりますし、初心者の方にも気軽に冬の運動不足解消のために参加してもらえたらと思っています。コースも3㎞、10㎞と初心者にも経験者にも楽しんで選んでもらえるように用意しています。
 四つ目は、全道各地のマラソン大会の日程や種目などを網羅した「北海道ランニングガイド」(年1回発行)、スポーツボランティア情報誌「北のスポボラ」(年3回発行・無料)を出版する事業です。ホームページでも情報を配信していますので、市民の皆さんに、もっと気軽に大会やスポーツボランティアについて知ってもらい、興味をもって参加して頂けたらと思っています。

(写真左)「北海道スノーマラソン」では思い思いのコスチュームに身を包んで参加する人の姿も。(写真右)団体が発行する「北のスポボラ」、「北海道ランニングガイド」。 (写真左)「北海道スノーマラソン」では思い思いのコスチュームに身を包んで参加する人の姿も。(写真右)団体が発行する「北のスポボラ」、「北海道ランニングガイド」。

冬のマラソン文化の浸透、シニアの生きがいの創出にも寄与していきたい

―活動の課題はありますか?

 定年を迎えて体力と時間に余裕のある60代のボランティア参加が増えています。ボランティアには、ご自身もランナーであるなど、競技に参加した経験を持つ方も多く、長く活動してくださっているベテランのボランティアの中には、70代、80代の方もおられて、皆さん大変活き活きと活動されています。スポーツボランティア活動を通して、健康寿命を延ばすお手伝いもしていけたらと思っています。生きがいというと大げさかもしれませんが、生活の楽しみのひとつにして頂けると嬉しいです。若者とシニアが同じボランティア活動をすることで触れ合う機会が生まれるなど、多世代交流の場にもなっています。
 しかしながら、全体的にボランティアの高齢化が進んでいるのが現状です。経験を次の世代へ引き継いでいけるような体制を作ることが今後の課題です。今後は、ボランティアを束ね、指導する人材を育てていきたいと思っています。

マラソンの楽しさを次世代へつなぐ

―今後の目標は何ですか?

 現在の主な事務局メンバーは主力が60代後半ですので、然るべき時期に新しいメンバーを迎えて組織の代替わりを行い、活動を継承していくことが大切だと考えています。そして、主催イベントである「北海道スノーマラソン」の参加者を増やし、札幌から冬に汗をかく楽しさ、冬に走るという文化をしっかりと根付かせていくことが目標です。

特定非営利活動法人ランナーズサポート北海道 (団体ページへ)

特定非営利活動法人ランナーズサポート北海道
■ 住所 札幌市中央区大通西3丁目6番地
■ 電話 011-210-5059
■ FAX 同上
■ メール runsupport@aurora-net.or.jp
■ 時間 10:00~16:30(火曜~木曜。ただし、祝日及び12/30~1/3を除く)
■ ホームページ https://runsupport-h.org/
■ Facebook https://www.facebook.com/runners.support.hokkaido/

今後の開催予定

北海道スノーマラソン、北海道マラソン教室、スポーツボランティアの募集については、ホームページ、Facebook、情報誌「北のスポボラ」で情報を発信しています。

取材を終えて

大会のたびに、多くのボランティアが活躍されていることを改めて感じました。2017年の北海道マラソンには4,600人を超えるボランティアが参加されたそうです。インターネット上には大会参加レポートという、大会に参加したランナーが評価を書き込めるページがあり、そこにはボランティアの皆さんへの感謝の言葉が数多く寄せられています。自分のできることを、思いやりの心をもって行動し、感謝されることでまた行動する、という循環が増えていけば、札幌はもっと素敵な街になると感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年11月27日現在の情報です。