「若者」と「国際協力」をつなぐ

若者が想うつながるカタチ
学生だからこそできる国際協力で「小さな幸せ」を届けたい

国際協力学生団体「結」(ゆい) 代表 大谷高史(おおたにたかふみ)さん

東南アジアをはじめとする開発途上国を訪れ、学生の自分たちだからこそできる支援の在り方を追求。若者と国際協力をつなぐ取り組みを通じ、開発途上国の子どもたちに小さな幸せを届けたいー。その想いを伺いました。

国際協力学生団体「結」(ゆい)
代表 大谷高史(おおたにたかふみ)さん

北海道大学工学部環境社会工学科2年。高校3年の夏、地理でアフリカについて学んだことをきっかけに国際協力に興味を持つ。2015年に北海道大学入学後、「結」に所属し、2017年から9代目の代表を務める。

学生が「自分たちにできる国際協力」を考える

―国際協力学生団体「結」(ゆい)を設立したきっかけを教えてください。

 約10年前に北海道大学の教授とその研究室のメンバーがフィリピンに行き、現地の子どもたちや貧困層に家を作る活動がきっかけだったと聞いています。2008年に国際協力学生団体「結」が結成され、当初の「家を建てる」という目的から、現在では「自分たちにできる国際協力」へと変わり、開発途上国への支援活動など、完全に学生だけで企画や運営を行っています。北海道大学の学生の他、北星学園大学、武蔵女子短期大学、東海大学など約30人のメンバーで活動をしています。

―活動内容について教えてください。

 大きく分けて活動内容は三つあります。
 一つ目は、開発途上国へのスタディーツアー(※)です。目的としては「現地の支援に関する活動」と「海外経験のない後輩への学びの機会提供」の二つがあります。2017年からスタディーツアーを年一回から年二回に増やしました。それまではメンバー全員で一つの国に行っていましたが、春と夏の長期休みを利用し、メンバーが3~4チームに分かれ、ネパール、タイ、ラオス、インドネシアなどの東南アジアやインドなどに行きます。2017年の夏にはケニアやエジプトなどのアフリカへ行くメンバーもいました。旅行会社を通さず、航空券や宿、現地の人々とのアポイントメントまで全て自分たちで手配しています。
 二つ目は、中学校や高校を訪れる出前授業です。約1時間の授業の中で、世界の貿易事情や貧富の差について、生徒たちの理解を深める「貿易ゲーム」や、「もし世界が100人の村だったら」という設定で、世界の多様性や人口の分布、貧富の差を知る「100人村ゲーム」など、国際協力について体験しながら学び、理解を深められるような内容になっています。
 三つ目は、毎週月曜に行っているメンバー全員が参加する全体会での勉強会の実施です。国際協力を行いたい国や企画などを出し合い、メンバーがそれぞれ興味を持った話題に対してプレゼンテーションをし、その知識をみんなで共有する場としています。
 その他、講演会や国際協力関係のイベントへの参加、北大祭でナシゴレンなどのインドネシア料理を提供したり、札幌のゲストハウスや公共施設にて、外国人観光客と交流するイベントなどにも参加しています。
(※)スタディーツアーとは、主に途上国でNGOが活動する現場を視察したり、ボランティア活動などを行う旅行のことで、体験学習や現地の人々との相互理解を目的としています。

(写真左)世界の貿易事情や貧富の差について、生徒たちの理解を深める「貿易ゲーム」を取り入れた出前授業。(写真右)スタディーツアーや国際協力についての出前授業。大学生は生徒と年齢が近く、生徒も親しみを持って耳を傾ける。 (写真左)世界の貿易事情や貧富の差について、生徒たちの理解を深める「貿易ゲーム」を取り入れた出前授業。(写真右)スタディーツアーや国際協力についての出前授業。大学生は生徒と年齢が近く、生徒も親しみを持って耳を傾ける。

「学ぶ側」から「支援する側」へ、国際協力の考え方に変化

―「若者」と「国際協力」をつなぐ活動とは?

 私が「結」に入った当初、活動のメインは自分たちが海外に行き「国際協力について学ぶこと」でした。もちろん、自分たちが学ぶことも重要ですが、開発途上国に対して何か具体的な支援活動をしたいという想いがあり、それまでは「国際交流」を主な目的としていましたが、2017年からは「国際協力として実際に支援する活動」へとシフトしました。
 その中の一つに「サクー村支援プロジェクト」があります。サクー村は2015年のネパール地震で大きな被害を受けました。地震後、北海道大学農学部の長南忠男教授と私の先輩である「結」のメンバーが現地へ行き、地震による被害状況の確認や、がれきの撤去などのお手伝いをしました。帰国した先輩から「「結」でも何かやらないか」と相談を受け、「「結」で何ができるだろうか」とメンバーで考えていたところ、「現地の子どもたちがぼろぼろでひどい状態の文房具を使っていた」という話を、先輩から聞きました。
 そこで、2017年の夏に「子どもたちに、文房具を送ってあげられる方法はないか?」と考え、札幌や千歳などの中学校や高校に協力してもらい、家庭で余っている文房具を集めました。各学校の生徒会やボランティア部が箱を設置してくれ、二週間くらいで集めてもらったのですが、先生方も生徒の皆さんも非常に協力的で、鉛筆やペン、消しゴムなどの筆記用具をはじめ、筆入れやノートなど集まった量は私たちの予想の5倍にもなり、ダンボール約10箱分を手荷物として持って行ったり、送ったりして寄付することができました。学生である自分たちが主体となって、地域や地域の若者と連携して、国際協力ができたのも非常に良かったです。

(写真左)集めた文房具を受け取った子どもたちが喜ぶ様子に「小さな幸せ」を届けられたことを実感。(写真右)次なる支援先を探し、フィリピンでもいろいろな学校を視察。 (写真左)集めた文房具を受け取った子どもたちが喜ぶ様子に「小さな幸せ」を届けられたことを実感。(写真右)次なる支援先を探し、フィリピンでもいろいろな学校を視察。

「小さな幸せ」を届ける、学生ならではの国際協力

―今後の目標や課題は何ですか?

 学生ならではの国際協力をしていくことが目標です。長期間滞在して開発途上国を支援することが、根本的な国際協力には必要なのかもしれませんが、現実的に学生には厳しいため「小さな幸せ」を届ける活動ができればと考えています。
 前回は文房具を寄付しましたが、国際協力には「ただ物を提供するだけの活動で良いのだろうか」という課題もあり、学生の自分たちにできる支援をメンバーで考えたとき、現地で運動会などのイベントを企画するという意見が出ました。こちらが与えるだけでなく、子どもたちと一緒に楽しむというほうが学生らしい支援につながるのではと考えています。運動会は海外では珍しい日本の風習であり、また開発途上国では副教科とよばれる音楽や体育などの授業がないことが多いため、息抜きのように子どもたちに楽しんでもらえれば嬉しいです。
 さらに、昔使っていた体育帽子を中学校や高校の協力を得て集めるなど、他とつながる活動にもなります。今後はスタディーツアー(※)による視察を重ね、ネパール以外に支援を行う国や支援内容を検討していくことが課題です。さらに、支援に関する具体的なプランを練り、クラウドファンディングにも挑戦していければと考えています。
 また、海外経験のない後輩がスタディーツアーを通じて実際に自分の目で開発途上国を見ることで何かを感じ取り、これからも「結」としての活動をつなげてくれれば嬉しいです。

国際協力学生団体「結」 (団体ページへ)

国際協力学生団体「結」
■ メール yui.international.cooperation@gmail.com
■ ホームページ http://icsa.web.fc2.com/index.html
■ twitter ID @yui_ICSA

今後の開催予定

毎年、春と夏の長期休みを利用して開発途上国へのスタディーツアーを行う。毎週月曜に勉強会を実施する他、国際協力に関するイベントへの参加、中学校や高校への出前授業、講演会などを行っている。詳細は団体ホームページ、Twitterへ。問い合わせ、申し込みはホームページのフォームまたはメールで受け付け。

取材を終えて

現在、世界には200近くの国が存在しており、そのうち150カ国以上が開発途上国と言われています。その事実を知った学生が国際協力に興味を持って海外へと目を向け、「自分たちならではの支援」を模索して活動する姿に、ただ頭が下がる思いです。全て自分たちで企画し、活動していること、また自分たちだけではなく国際協力を通じて、札幌近郊の中学生や高校生などの若者とも連携していきたいという考えは大変素晴らしいと感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2018年3月6日現在の情報です。