「学生」と「働く」をつなぐ

若者が想うつながるカタチ
働く目的、学生と社会人が語り合う

特定非営利活動法人ハタモク北海道 代表理事 中田隆太(なかたりゅうた)さん

「何のために働くのか?」をテーマに、学生と社会人が語り合う場「ハタモク(=働く目的)」。学生や若者が社会に出る前に、働くことの意味や目的を考えることを、日本の常識にしたい。学生と社会人が「何のために働くか」を気楽に真剣に話せる場を増やす活動がしたい。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人ハタモク北海道
代表理事 中田隆太(なかたりゅうた)さん

北海道武蔵女子短期大学就職課に勤務。2012年、東京で開催された「ハタモク」に参加したことがきっかけで「北海道でもやりたい」という想いを抱き、翌年、北海道で初のハタモクを開催。その後、仲間とハタモク北海道運営委員会を立ち上げ、活動を開始。

就活・進学の先にある「働く」を考える

ハタモクの会場では、学生と社会人が対等な関係で率直に語り合う。 ハタモクの会場では、学生と社会人が対等な関係で率直に語り合う。

―学生と社会人が働く目的を語り合うことに、どのような意義があるのでしょうか?

 普段の生活の中で、働く目的や意味について話し合う機会は少ないのではないかと思います。高校生は進学や成績について先生と話す機会はあっても、その先の働くことまで話し合うことは少ないようですし、大学生も就職活動について友人と話すことはあっても、就活の先にある働くことへの不安や思いをありのままに話したり、周りの友人の考えを聞くような機会はあまりないといいます。「ハタモク」の魅力は、すでに社会に出て働いている人たちの本音を近い距離で聞けることです。高校生からは「自分の話を聞いてもらえてうれしかった」「社会で働いている人の意見を聞けてよかった」という声がよく聞かれます。

―初対面でも、学生と社会人は本音で語り合えるのでしょうか?

 ハタモクでは4人ほどの小さなグループに分かれて、文字通り膝を交えて語り合います。少人数の方が発言が活発になるためです。司会役がテーマを与え話し合いをサポートしますが、参加者同士で話が弾み、場所を変えて語り合いが続くこともあります。社会人の方からは「今の若者はしっかりした考えをしている」「初心に帰ることができた」といった声が聞かれ、学生とのつながりは若い人達の意見や価値観を知る貴重な機会となっているようです。

(写真左)学生と経営者を対象に開催したハタモク。和やかな雰囲気の中、本音で語り合う参加者ら。(写真右)武蔵女子短大の学生とOGらで開催したハタモク。司会役が進行をサポートする場面も。 (写真左)学生と経営者を対象に開催したハタモク。和やかな雰囲気の中、本音で語り合う参加者ら。(写真右)武蔵女子短大の学生とOGらで開催したハタモク。司会役が進行をサポートする場面も。

社会人とのつながりが、進路の選択を後押し

―実際に、進路や人生が変わった学生はいますか?

 例えばある女子学生は、ハタモクでの社会人との出会いが、米国留学を後押ししてくれたと話してくれました。当初、大学3年生だった彼女は、留学すると就職活動に乗り遅れるのではと心配していたそうなのですが、ハタモクで社会人参加者から「自分が一番したいことは何かを考えてみては」と言われたそうです。留学から帰国後に大手企業の内定が決まり、ハタモクに報告に来てくれました。
 学生にとって、社会経験のある人に自分の話を聞いてもらえる機会は貴重です。多くの学生が「就活はゴールじゃない」という気づきを得たり、働くことをより具体的に考えられるようになります。立場や価値観の異なる人々がつながり意見を交わすことで、互いに高め合っていく。それがハタモクの活動です。

―社会人と話す中で、学生は働く目的を見つけられますか?

 働く意味に何か決まった答えがあるわけではなく、自分なりの目的を自分で考えることが大切なのではないかと私は考えます。働くことに対する漠然とした不安や悩みなど、「モヤモヤ」した思いを抱えてハタモクにやってくる学生は多いのですが、ハタモクが終わる頃には皆すっきりとした表情になり、来た時とはまるで違う顔つきで帰っていきます。初めに抱えていた「モヤモヤ」が消えたかと思ったら、「こうすればいいかもしれない」「これはできるだろうか?」といった次の「モヤモヤ」が出てくるかもしれません。でも、それは次のステップに進んだということ。そして、「自分がどう生きていきたいか」まで含めた長いスパンで働くことを考えられるようになり、目の前の就職活動や勉強にも、目的意識が高まるのではないでしょうか。

道内各地へ、活動を広げていきたい

―今後の目標や課題はありますか?

 現在、札幌を中心に活動していますが、旭川、帯広でも活動を展開しています。今後は、もっと色々な地域ともつながっていきたいと考えています。地域での活動を軌道に乗せるにはその地域で活動に賛同してくれるキーマンが必要です。そうした方とともに、ハタモクを広げていければと考えています。

特定非営利活動法人ハタモク北海道 (団体ページへ)

特定非営利活動法人ハタモク北海道

今後の開催予定

現在、年に4、5回「ハタモク」を開催しているほか、月に1回、10人程度のメンバーで平日夜に打ち合わせを行っている。今後の「ハタモク」開催日程については、団体ホームページ、またはFacebookへ。参加申し込みは、Facebook、メールで受け付け。

取材を終えて

自分も学生の頃に進路に迷い、悩んでいたことを思い出しました。あの頃、ハタモクのような学生や若者が立場や年齢を超えて社会人とつながることができる活動に参加していたなら、もっと広い視野で将来を考えることができたかもしれません。次世代の中心となっていく若者たちが働くことや将来の進路に悩んだ時、こうした場所で社会人とつながり、悩みを話したり聞いたりしてもらえることは、大きな支えになるだろうと感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年10月26日現在の情報です。