「キャンプ」と「学び」をつなぐ

つながりが創る豊かな子育て
参加者もスタッフも皆が学び、成長できる楽しいキャンプを実現

特定非営利活動法人遊び屋本舗 理事長 山田憲昌(やまだのりあき)さん

特別な何かを学ぶためではなく、人との関わりの中で子どもが楽しみながら成長できる機会を提供したいー。キャンプと学びをつなぐ、遊び屋本舗流「参加者もスタッフも全員が楽しむキャンプ」。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人遊び屋本舗
理事長 山田憲昌(やまだのりあき)さん

小学5年生から研修を受けた社団法人(現在は公益財団法人)札幌市子ども会育成連合会ジュニアリーダーの経験を活かし、有志のメンバーによる活動を開始。公園緑地管理財団滝野管理センター青少年山の家、社団法人札幌市子ども会育成連合会勤務を経て、2002年にボランティア団体として遊び屋本舗を結成、2014年にNPO法人を設立し、理事長を務める。

他者との関わりが人を成長させる

―「遊び屋本舗」を立ち上げたきっかけを教えてください。

 もともと社団法人札幌市子ども会育成連合会のジュニアリーダー養成研修会で一緒だったメンバー数人が集まり、「札幌市だけに限らず、近郊の小学生やボランティアと一緒に幅広く活動したい」という想いで、2002年にボランティア団体を結成したことから遊び屋本舗は始まりました。ジュニアリーダーは大人が小学生を指導するという形ではなく、仲間同士や年齢の近い中学生がアドバイスをしたり、サポートすることで、地域の子ども会の活動を楽しくスムーズにするという役割を担っています。その経験者が有志で集まり、「他者との関わりが自然と人を成長させる」という考えから、子どもが泊まりがけで過ごすキャンプの企画を始め、今年で15周年を迎えました。

(写真左)遊び屋本舗でもジュニアリーダー研修会を実施。(写真右)自分たちで作った部屋で寝食を共にし、ダンボールオーブンで焼いたピザを食べるなど、楽しいアイデア満載のキャンプ「つくろう!ぼくらのダンボール王国」。 (写真左)遊び屋本舗でもジュニアリーダー研修会を実施。(写真右)自分たちで作った部屋で寝食を共にし、ダンボールオーブンで焼いたピザを食べるなど、楽しいアイデア満載のキャンプ「つくろう!ぼくらのダンボール王国」。

―どんな方が関わっていますか?

 現在、スタッフは約50人、ボランティア登録数は200人を超えます。2002年のボランティア団体結成時からのスタッフも多く、ボランティアとして参加しているうちに魅力にとりつかれたメンバーや、かつてキャンプに参加していた小学生が今ではスタッフとして在籍するなど、10代から50代まで幅広い年齢で構成されています。キャンプやイベント当日は参加者である小中学生以外にも、学生、異なる職種・経験を持つボランティアやスタッフが集まり、いろいろな人たちとの交流が自然と生まれる場となっています。

キャンプの中でのさまざまな経験が人生を豊かにする

―現在の活動内容を教えてください。

 成長過程において、異年齢の子どもたちと自由に交流し、遊べる場は重要です。遊び屋本舗では、年間スケジュールを決定した後にスタッフが5つのチームに分かれ、みんなでプログラムを企画します。参加者だけでなくボランティアやスタッフが全員で楽しむためにも、「まずは自分たちが楽しいと思うことを考える」ということを心掛けています。
 活動内容については、主に子ども向けキャンプの企画を行っています。全道各地で小学生を対象に行う「テーマ別キャンプ」や親子参加型の「ファミリーキャンプ」の他、日帰りの事業として、札幌市内の小学校の体育館や旭川と帯広の地域施設にて、異年齢レクリエーション大会「がんばっテーリング」を開催しています。さらに、2017年は中学生を対象とした「防災リーダー養成研修会」を実施しました。これは、中学生が被災地・宮城県を訪れ、東日本大震災の経験を活かした防災プログラムを体験し、今後起こりうる災害についての教訓を学ぶというものです。そして、そこで学んだ中学生が今度は防災リーダーとなって小学生に指導するという「防災キャンプ」を札幌市南区のオートリゾート滝野、石狩市美登位にある美登位創作の家の2カ所で開催しました。その他にも、オートリゾート滝野でのキャンプファイヤーやイベント補助などの派遣事業、各子ども団体の活動支援など、さまざまな活動をしています。中でも、忍者になりきる遊びを取り入れた小学校低学年を対象としたキャンプは、告知後すぐに定員になるほどの大人気企画です。忍者修行をしながらチームの結束力を深めたり、チャンバラ用の刀や、修行に必要な巻物を作ったりと楽しい要素に溢れています。また、温泉やプールに行ったり、早朝に厚田港に行き水揚げの見学後に朝市で鮭などの魚介類を購入し、皆でバーベキューを楽しむなど、子どもたちとの会話の中から生まれたスタッフの楽しい思いつきが次々と形になる小学校高学年を対象としたキャンプもとても好評です。

(写真左)忍者めがね丸による修行をしながら、皆で忍者になりきって遊ぶ二泊三日。毎回参加するリピーターが続出の大人気キャンプ。(写真右)一泊二日の防災キャンプでは避難所設営や被害状況確認マップを作成する防災知識の他、災害時に役立つポリ袋クッキングも実践。 (写真左)忍者めがね丸による修行をしながら、皆で忍者になりきって遊ぶ二泊三日。毎回参加するリピーターが続出の大人気キャンプ。(写真右)一泊二日の防災キャンプでは避難所設営や被害状況確認マップを作成する防災知識の他、災害時に役立つポリ袋クッキングも実践。

―「キャンプ」と「学び」はどのようにつながりますか?

 実は、最も重視しているのはキャンプの「自由時間」です。キャンプごとにテーマは設定していますが、必ずしも「何か」を学ぶことが目的ではありません。特にキャンプは泊まりがけで長時間滞在するため、自由時間を多く確保することができます。子どもも大人も関係なく参加者とスタッフが一緒になって自由に交流し、走り回って遊ぶ人たちもいれば、休む人たちもいます。各自が自由に過ごす時間にこそ、さまざまな人との関わりによる学びがあり、その中で育まれるものが必ずあるのです。キャンプのプログラムの中で「何を作った」ということより、「仲間と一緒に寝た」「誰かと語り合い、こんな遊びをした」ー。子どもにとって親兄弟以外の人と寝食を共にすることは、大人になってもずっと忘れることのない大切な経験になると考えています。

より多くの子どもたちを楽しませ、幸せにしたいという願い

―今後の目標は何ですか?

 少子化が叫ばれる今、昔あった町内会組織などの子ども会も全盛期の半数以下になっています。遊ぶ場所もコミュニケーション方法も昔とはかなり様変わりし、異年齢の子どもたちで遊ぶ機会も失われつつあります。そのため、子どもたちの活動を支援する団体がもっと増え、子ども会など小学生に関わる全ての団体と力を合わせていくことで、できるだけ多くの子どもたちに楽しんでもらえる事業を今後も展開していきたいです。遊び屋本舗としても、現在は得意分野ごとに固定している専門スタッフを増員することで、活動回数や規模を拡大し、今後は札幌近郊や旭川、帯広、函館だけでなく、道内各地でキャンプなどのイベントを実施していきたいと考えています。また、今年は宮城県で防災リーダー養成研修会を実施しましたが、他にも新潟県や神戸市、熊本県などで防災関連の事業を行い、交流することを視野に入れています。さらに、キャンプ場を併設する国営公園を持つ四国のまんのう町、広島県など、北海道外にも活動の場を広げることを目指しています。少しでも子どもたちが自由に遊べる場所づくりと、人生を豊かに彩る思い出づくりをすることで、子どもたちを幸せにしたいというのが目標です。

特定非営利活動法人遊び屋本舗 (団体ページへ)

特定非営利活動法人遊び屋本舗
■ 住所 札幌市東区北40条東6丁目2番15号
■ 電話 011-557-5511
■ FAX 011-788-9940
■ メール asobiyahonpo@asobiyahonpo.com
■ 時間 9:00~17:00(事務局開局時間)
■ ホームページ http://www.asobiyahonpo.com/
■ Facebook https://www.facebook.com/asobiyahonpo/
■ instagram https://www.instagram.com/asobiyahonpo/

今後の開催予定

現在、一年間で40回以上のキャンプやイベント、遊び屋本舗ジュニアリーダー研修会などを企画。日程など詳細については、団体ホームページまたはFacebookへ。ボランティアも募集中。週に一回、スタッフによる打ち合わせを行っている。問い合わせ、参加や登録の申し込みはホームページの各種フォームから、またはメール、電話で受け付け。

取材を終えて

リピーターが参加者の半数以上を占めるという遊び屋本舗のキャンプは、都合が合わず参加できない子どもから泣きながら電話がかかってくるほど大人気で、設立から15年の間にかつて小学生だった参加者がスタッフになるなど魅力に溢れています。さまざまな人と関わり、時間を共に過ごすことで、子どもたちはお互いを理解し、信頼し合います。キャンプを通じて伸び伸びと楽しむことが、子どもたちの成長につながるのだと感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年11月10日現在の情報です。