おやじが地域の子どもたちを見守る社会を目指して
母親とは違う目線で、父親として学校や地域の子どもたちを見守り、理解を深めたいー。地域のつながりが希薄化する今だからこそ、楽しみながら力を合わせて活躍を続ける「おやじ」たち。その想いを伺いました。
札幌おやじネットワーク
代表 竹内嘉昭(たけうちよしあき)さん
我が子の入学を機に小学校で結成されている「おやじの会」に入会、約15年間活動を続けている。2014年に札幌おやじネットワークの代表に就任。
地域と子ども、おやじがつなげる輪
―「札幌おやじネットワーク」を立ち上げたきっかけを教えてください。
子どもをもつ父親が学校や地域の活動を通じ、子育てに積極的に関わるため、約20年前から全国各地の学校単位で結成されているのが「おやじの会」です。札幌市内にも昔から小学校のおやじの会がいくつもありましたが、学校ごとの活動になるためメンバー同士が集まる機会がなく、ずっと情報交換をしたいという想いがありました。ちょうど2012年11月に全国のおやじの会のメンバーが集結する「全国おやじサミット」を札幌で開催することになったことがきっかけとなり、2011年に「札幌おやじネットワーク」が設立されました。現在のメンバーは約30人、子育て真っ最中の現役の父親だけではなく、子育てを終えた父親も参加しており、幅広い年齢層で構成されています。
―現在の活動内容を教えてください。
札幌おやじネットワークの主な活動は、地域のおやじの会同士をつなぐことです。市内の各おやじの会の情報共有や交流を目的に月一回の定例会を開催し、毎年開催される全国おやじサミットでは全国に多数存在するおやじの会とも交流しています。また、おやじの会がない小学校に関しては、新規に立ち上げる支援活動も行います。
その他にも、地域と子どもをつなぐ活動を行っています。代表的なものとして、毎年2月に小学生を対象とした「真冬の逃走中」という企画があります。過去3回開催しているのですが、ありがたいことに定員300人のところ、2,000人もの応募が殺到するほどの大人気イベントです。おやじの会のメンバーだけではなく、中学生以上の子どもたちの他、大学のボランティアサークルにも協力をしてもらい、さとらんどや厚別競技場など真冬の札幌を舞台に鬼ごっこを楽しんでいます。冬という季節を選んだ理由は、走って転んでも積もった雪でけがをしにくいというのがありますが、それ以外にも、冬はどうしても外で遊ぶ機会が減りがちなため「せっかく札幌で育っているのだから、家の中にこもっているよりは外で雪遊びを楽しんでほしい」という考えからです。子どもたちが将来を考える上で、視野を広げることは特に重要ですが、まずは自分の生まれ育った地域の良さをよく知り、その上で外へと羽ばたいてほしいと考えています。
また、おやじたちが腕を振るう「おやじ級グルメNo.1決定戦OG-1グランプリ」というイベントも開催しています。毎回食材のテーマを決め、おやじの会同士でメニューを考案し、調理したものの中からどれが一番おいしかったかを投票してもらうというものです。単におやじたちだけの祭りではなく地域との連携を大事にしており、多いときで来場者は約1,000人にもなります。ゲストとして東京や福岡のおやじの会も視察に足を運んでくれたり、愛媛で印刷会社を経営するおやじの会のメンバーが投票のシールをボランティアで作ってくれるなど、全国のおやじの会同士の絆を強く感じる機会にもなっています。
(写真左)年に一度、北は北海道から南は九州まで、約300人が集結し交流する「全国おやじサミット」。(写真右)地域の夏祭りへの出店も、おやじたちにとって多くの子どもたちと触れ合うことができる貴重な機会。その他にも、毎年地域の夏祭りにかき氷や綿あめのブースを構えており、そこでは札幌おやじネットワークのメンバーほぼ全員が交代で参加するなど、地域の子どもとのつながりを楽しんでいます。
おやじと子どものコミュニケーションがつくる、安心して暮らせるコミュニティー
―どのような時に「おやじ」と「子育て」のつながりを意識されますか?
おやじたちが子どもと関わる中で、ヒントや気付きを得て自分を客観的に振り返ったり、仕事に活かしたりと、子どもの物事の捉え方や発想の柔軟さに大人が学ぶことは意外と多いと感じています。一般的に、父親同士が集まり情報交換するような機会というのはなかなかありませんが、おやじたちが子育てについて話し合い、子どもの目線に立って理解を深めることによって、自分の子どもへの接し方が変わり、かける言葉や関わる回数が増えることにつながります。また、子どもにとっても、おやじの会が関わるイベントはさまざまな大人とのコミュニケーションを学ぶ良い機会にもなり、関わり合いながら相互に成長することを実感しています。その他、昔は町内に怖いおやじがいて悪いことをすると叱られるなど、地域で子どもを見守っているという意識がありましたが、時代の変化により今は薄れつつあります。PTAのバザーや運動会のお手伝いなど、おやじの会の活動に参加することで子どもたちと顔見知りになり、それによって子どもたちからの挨拶も自然と生まれてきます。コミュニケーションは「地域ぐるみで子どもを見守る」ということにもつながり、みんなが安心して暮らせるコミュニティーづくりにとても重要だと考えています。
おやじたちが子育てを学び、楽しむ機会を増やしたい
―活動を続けていく上で、今後の目標はありますか?
開催するイベントなどを通じて、おやじの会や札幌おやじネットワークを知ってもらい、広めていくことが目標です。そのためにも、活動の楽しさを伝えることで札幌市内のおやじの会を活発化させ、おやじの会を増やす支援をしていきたいと考えています。また、「おやじが子育てを学ぶ機会」として、札幌市内の子どもを持つ父親全員を対象とした「札幌おやじサミット」の開催を検討しています。過去には食育をテーマにニセコで田植え体験をするなど、おやじのための勉強会を実施していました。現在は一度体制を整えるために休止していましたが、これから復活させていきたいです。
札幌おやじネットワーク (団体ページへ)
■ 電話 | 090-7056-4675 |
■ メール | sapporo.oyaji.network@gmail.com |
■ ホームページ | https://sapporo-oyaji-network.jimdo.com/ |
https://www.facebook.com/札幌おやじネットワーク-894565130658839/ |
今後の開催予定
「真冬の逃走中」や「OG-1グランプリ」を今後企画する予定。日程など詳細については、団体ホームページまたはFacebookへ。また、毎月約30人のメンバーによる定例会を実施。各種イベントへの参加申し込みはホームページの申し込みフォームから。問い合わせはメールまたは電話で受け付け。
取材を終えて
「子どもたちと触れ合うことが何より楽しい」と語る姿がとても印象的で、おやじ同士が集まり、子どもについてあれこれと語り合いながら交流することがおやじの会や札幌おやじネットワークの原動力なのだと感じました。現代は地域のつながりが希薄になりつつあるため、ママ同士だけでなく、おやじ同士の横のつながりがあることで、地域に安心感が生まれます。大人の目が行き届く地域づくりは、子育てにおいて特に重要だと感じました。
※2017年11月17日現在の情報です。