「市民と共に創るホスピスケアの会」山田富美子さんにお話を伺いました。
特定非営利活動法人 市民と共に創るホスピスケアの会
副代表 山田富美子(やまだふみこ)さん
東京にて看護師として勤務された後、結婚退職し、ご主人に同行されて欧州へ。
2004年より札幌在住。2004年のホスピスケア市民講座参加をきっかけに、2005年より「市民と共に創るホスピスケアの会」の活動にボランティアとして参加し、現在に至る。
北海道がん対策推進委員会委員
札幌ホスピス緩和ケアネットワーク常任幹事
日本死の臨床研究会北海道支部常任世話人
ホスピスケアのイメージは今、変わりつつありますね。
―近年、「ホスピスケア」という言葉の意味が少し変わってきたように思われますが、いかがでしょう。
この会ができた当初は、緩和ケア病棟、ホスピスケア病棟というものが、まだ北海道にでき始めた頃で、一つか二つしかなかったんです。そこで、その「ホスピスケア」※をひろめようということで、会の名前にも「ホスピスケア」という名前が入っています。
今、それから約20年が経ちまして、北海道にも随分たくさんのホスピスケア病棟ができました。国のがん対策の中にも「緩和ケア」※についての項目がたくさん出てきてまして、皆さんのイメージも変わりつつありますね。厚生労働省の「がん対策推進基本計画」では、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置付けられていて、終末期だけでなく、がんと診断された時から、がん治療と同時に身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が行われることが求められています。
私どもの会も、半分くらいの会員さんは、おそらく会設立時から入っていらっしゃる方だと思います。
ただ、最初そのような形で始まったものなので、「最後の死に場所」という風なイメージが相変わらず残っていまして。市民や患者さんだけではなくて、医療関係者の方も、まだそのように考えている方もいるんですね。がん対策の中に、「診断時から緩和ケアをしましょう」と書かれているんですけれども、それがまだ普及していない現実もあります。
―どのような活動をされているのですか?
活動の種類はいろいろありますけれども、市民に対する啓発活動、がん医療や緩和ケア、がんに関する政策についての啓発活動など。メインはやはり患者さんとご家族のサポートです。
また、私どもの会の特徴といいますか、いろいろな会員さんがいらっしゃいます。医療関係者の皆さん、もちろん患者さんやご家族の方、市民ボランティアの方もいらっしゃいます。
がん患者を取り巻く社会を、変えていかなくては。
写真左)がんの患者さんとご家族の方が悩みを語り、体験を分かち合う場をさまざまな形で提供しています。写真右)市内の地下歩行空間で、がんの無料相談やミニ講演会、小冊子やリーフを配布。がんの診断や治療の後にも充実した生活が送れるよう市民への啓発に努めています。―山田さんご自身が、この会に参加されたきっかけを教えてください。
2004年に、この会の市民講座に参加しまして。その中で「リエゾン(仏語: liaison=つなぐの意)スタッフを求めている」というお話があったんです。要するに、医療関係者と市民や患者さんをつなぐ役目のスタッフを求めているというお話で。当時は看護師を辞めて主婦でしたので、何か「もう医療に携わることは不可能」と考えていたのですが、今にして思えば、「やり残し」感があったのかなと。「何かできるならば」という感じでこの事務所に来て、スタッフになりました。
―現在、まさにそのような活動ですね。
はい。いろいろなサポートをさせていただいて、患者さんや、ご家族の方、それからご遺族も少しお元気になられて。そういう様子を見ているのは、私にとって励みになることです。
―患者のためのがん対策にも、提言されてきたとお聞きしましたが。
現在、北海道のがん対策推進委員会の中には、患者さんで委員の方が2人いらっしゃるのですが、実は、それまで患者関係委員は、患者ではない私1人だったのです。「患者さんがいなければ、本当の意見は聞けない」ことをお伝えして、今年(2016年)の春から、患者委員を実現することができました。それまでは、私が代弁するしかなかったのです。でも代弁なので、患者さんご自身の本当の気持ちがわかるかというと、決してそんなことはないのです。
―患者さんを取り巻く環境の改善につながっているのですね。
この会に入った2005年頃から、「がん対策」というものが動き始めたんですよ。入ったと同時に世の中がそのような動きになってきたのです。私が北海道に来たのも何かのタイミングだったのでしょうね。
困ったことがあったら、とりあえず来ていただきたいです。
―今、緩和ケアを必要とされている方に伝えたいことはございますか?
体の痛みの緩和だけではなくて、心の痛み、それから社会的な痛み。痛みの種類って、色々ありますよね。私たちは医療関係者ではないので、体の痛みの緩和をすることはできないのですが、心の痛みは、お話しする中でちょっとだけ和らげることができる。それから経済的な悩みについても、直接お金をさしあげて悩みをなくすことはもちろんできませんけれども、「こういう制度もありますよ」ということをご紹介することで経済的に助けられる方もたくさんいらっしゃる。
堅苦しく考えないで、困ったことがあったらとりあえず来て、相談していただけたら。それこそリエゾン、いろいろなところに「つなぐ」ことができるので。そういうことが、私たちができる「緩和ケア」かなと思っています。
―市民のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
今、「二人に一人はがんになる」と言われていますので、「他人事ではない」ということをお伝えしたいです。おそらくどの方も、ご家族に限らずお友達とか身の回りにどなたか、がん患者がいらっしゃると思います。
がんの患者さんがもし身近にいた時に、どういう風にしたらいいかということも、がんのことをお勉強していただくと少しおわかりいただけるかもしれませんし、何よりもご自身ががんにならないように、それからがんになっても早く手当てができるように。そういう知識を1人でも多くの方に、身につけていただけたらいいなと思います。
特定非営利活動法人 市民と共に創るホスピスケアの会 (団体ページへ)
今日の誰かの安心と、
明日の私の安心のために
市民と共に創るホスピスケアの会は、1997年に生まれました。私たちは人生の最後まで自分らしくありたいと願い、「その人らしい生と死を支える」というホスピスの考えが終末期だけでなく医療全体の、そして社会の基本となることをめざしています。
他の誰のことでもなく自分の問題として、そして次代に本当の豊かさを伝えるためにも、より多くの皆さまに参加していただけるよう願っています。
■ 住所 | 札幌市中央区南1条西16丁目1-245(札幌医科大学病院向かい側 レーベンビル3階) ※地下鉄東西線「西18丁目」5番出口から徒歩3~4分) |
■ 電話/FAX | 011-615-6060 |
■ 時間 | 月・火・木曜 10:00~15:00 ※不在日あり |
◎お問い合わせ
shimin-hospice@nifty.com
活動概要
- ホスピスケア市民講座(3~4回/年)
- 多彩な講師を迎え、がん医療や緩和ケアについて総合的に学習します。
- 会報発行(2回/年)
- 市民講座レポート、催し、がん医療や緩和ケアについての情報をお知らせします。
- ひまわりサロン(第1・3火曜日 13:30~15:30)
ひまわりナイトサロン(毎月第3金曜 18:00~20:00)
がんの患者さん・ご家族が悩みを語り、体験を分かち合い、支え合う場です。 - ちえのわ(3~4回/年)
- 医療関係者による情報提供支援。自分の力で病気や治療と折り合い、充実した生活を送ることができるよう、患者・家族の皆さんの持つ力をサポートします。
- ちえのわ 街なかカフェ ~がんと暮らしの知恵いろいろ~(年1回)
- がんに関するミニ講演や相談を"チカホ(札幌駅前通地下歩行空間)"で開催します。
- なのはなの会(遺族会)(毎月第2火曜 13:30~15:30)
- 大切な方をがんで亡くされたご家族が同じ立場の方と語り、体験を分かち合い、支えあう場です。
- みもざサロン(アピアランスケア)(偶数月第2土曜 13:30~15:30)
- 手術や皮膚変色のカバー、眉の書き方、爪のケアなどを指導します。
- ウィッグレンタルサロン(毎月第2水曜13:30~15:30、第4金曜10:00~12:00)
- ※会場:北海道がんセンター(札幌市白石区菊水4条2丁目3-54)
がん治療の副作用の脱毛に悩む患者さんに、ウイッグ(かつら)を貸し出しています。
- ※会場:北海道がんセンター(札幌市白石区菊水4条2丁目3-54)
※2017年1月13日現在の情報です。