「市民」と「地域文化」をつなぐ

未来につなげたい北のたからもの
街を知り、関わり、好きになる。特別な夏の夜。

特定非営利活動法人カルチャーナイト北海道 事務局長 畑瀬亜紀子(はたせあきこ)さん

市民と企業・官庁が協働連携し開催する「カルチャーナイト北海道」。札幌の夏の夜に、住民と地域による新たなつながりとして生まれ、現在に続いています。北海道の未来を担う子どもたちが地域の文化に触れることによって、子どもたちの健全な育成と、地域文化の伝承につなげたいー。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人カルチャーナイト北海道
事務局長 畑瀬亜紀子(はたせあきこ)さん

2008年より有限会社アールズセミナー勤務。カルチャーナイト北海道事務局と事務所を共用していた縁がきっかけとなりイベントの運営にも携わる。2016年から特定非営利活動法人カルチャーナイト北海道事務局長を務める。

※カルチャーナイトとは、札幌で2003年から開催されている文化施設や公共施設等を夜間開放し、市民が地域の文化を楽しむイベントです。学校の夏休み直前の金曜日に開催され、札幌市時計台等の文化財、美術館や博物館等の社会教育施設、札幌市役所や北海道警察本部等の官公庁の他、テレビ局や民間企業にも夜間開放の動きが広がっています。

偶然の出会いから、つながる想い

―カルチャーナイト北海道を立ち上げたきっかけを教えてください。

 有限会社アールズセミナーの代表を務める佐々木亮子(前カルチャーナイト北海道実行委員会副委員長)が、1997年に交流調査を目的としてデンマークを訪れる機会がありました。カルチャーナイト視察のためではなかったのですが、偶然開催されていたイベントを見て「なんだこれは!」という強い驚きを得たそうです。10月の肌寒い時季に、札幌よりもずっと暗い、デンマークの夜道を、たくさんの親子連れが歩いている光景に「いつかこれを北海道でもやりたい」という想いが生まれ、その後北海道副知事に就任したことを機に、温めていた想いを実現したいと動き出したことがカルチャーナイト北海道を立ち上げたきっかけです。
 カルチャーナイト1回目は、2003年赤れんがフェスタ内のイベントのひとつとしての開催でしたが、次年度からは単独で開催できる規模に発展しました。現在、カルチャーナイトの開催日には、かつて佐々木が目撃したデンマークの夜道のように、たくさんの親子連れが夕暮れの北一条通りを歩く様子は壮観です。

(写真左)グループ参加による、知事公館での演奏風景。(写真右)日中は多くの観光客で賑わう施設も、日没後は新たな表情で市民を迎え入れる。 (写真左)グループ参加による、知事公館での演奏風景。(写真右)日中は多くの観光客で賑わう施設も、日没後は新たな表情で市民を迎え入れる。

―カルチャーナイト北海道の魅力は何ですか?

 多様な楽しみ方ができることでしょうか。普段は夕方で閉館してしまう美術館の展示を仕事帰りに楽しむことや、素晴らしい意匠の建築物で夕暮れのコンサートを聴くこともできます。中心部のイベントを数カ所回る楽しみ方もありますし、郊外の施設1カ所をじっくり観るという方法もあります。2017年からはシェアサイクル(ポロクル)と連携をしているので、公共交通機関では遠回りになってしまう会場でも、自転車を利用することで変則的な回り方も可能になりました。警察署や刑務所のような公共施設も人気があります。非日常的で接点のない場所に踏み込む特別感は、子どもも大人も同じようですね。

(写真左)市役所の議場見学も、ただ見るだけではなく、その雰囲気を体感することができる。(写真右)親子で楽しめるプログラムも多い。夏の夜のお出かけに笑顔を見せる子どもの姿も。 (写真左)市役所の議場見学も、ただ見るだけではなく、その雰囲気を体感することができる。(写真右)親子で楽しめるプログラムも多い。夏の夜のお出かけに笑顔を見せる子どもの姿も。

いつもの街での新たな発見。日常とはちがう刺激を

―カルチャーナイトに参加している方の様子を教えてください。

 例えば会場の一つである知事公館など、そこにあるのを知っていても、入ったことのない方も多いと思います。実際に館内に入ってみて、壁や床など住宅とは違う建築物の魅力を楽しむことができますし、イベントへの参加を通して地域とのつながりを身近に感じられます。例えば、参加している銀行の行員の皆さんは、とても楽しんでくださっているようで、当日はスーツではなくカルチャーナイトのお揃いのTシャツ姿で参加者を迎えてくださっています。たくさんのお札を数える技術をレクチャーされた子どもが、表情を輝かせながら「すごーい!」と声を上げている様子を目にしたことがありますが、そういった直接的なやりとりは、施設を開放する団体の皆さんにとっても、刺激があるのではないかと思います。

―運営にはどのような方が関わっていますか?

 事務局は2人で運営していますが、約90人のボランティアの方にお手伝い頂いています。毎年参加してくださる方もたくさんいらっしゃいます。子育て中の方で決まった時間に動くことが難しい場合は、インターネットを介してできる作業をお願いしています。
 カルチャーナイトを開催して今年で16年目を迎えますが、これまでに1件の事故もないのは、参加施設の皆さんのご協力の賜物です。毎回、細かいところまで配慮してくださり、事務局だけではまかなえない部分を助けていただいています。

―どんな方が参加されていますか?

 仕事帰りの方はもちろん、親子連れ、おじいちゃん、おばあちゃんがお孫さんと一緒に参加しているケースもあります。毎年、母親と2人で参加している娘さんが、高齢のお母さまに、カルチャーナイトのパンフレット見せて、「今年はどこに行く?」と相談をするなど、毎年楽しみにされているというお話も伺いました。
 また、外国の観光客の方が偶然イベントを知って、道庁赤れんが庁舎内の文書館を見学した際、明治時代に北海道の礎を築いた人たちの中に、自分と同じアメリカ人もいたということを知り、大変感動されていたというお話を、ボランティアの方から聞いたこともあります。

地域とのつながりを通して、街への思いを育てたい

―活動を続ける上で、今後の目標はありますか?

 今年は北海道150年事業があり、私たちも北海道みらい事業に登録しています。カルチャーナイト開催と同じ週に、赤れんが庁舎前庭でのコンサートを企画していて、グループ参加の方々に、合唱や楽器の演奏など発表の場を提供したいと考えています。また、函館や室蘭など、道内各地のカルチャーナイトに関わる方々との、地域間交流も計画中です。将来的には、いまカルチャーナイトに参加している子どもたちが楽しんだ思い出を基にして、地域とのかかわりを楽しみにする大人になってくれれば嬉しいですね。自分から行動すると地域が身近になって、その地域を好きになることにつながります。更にその気持ちが、この街に住んでいて良かったという想いにつながる、その循環を定着させたいです。

特定非営利活動法人カルチャーナイト北海道 (団体ページへ)

特定非営利活動法人カルチャーナイト北海道
■ 住所 札幌市中央区北4条西7丁目5番地 緑苑第2ビル707号室
■ 電話 011-261-8633
■ FAX 011-522-6607
■ メール office@culture-night.com
■ 時間 10:00~17:00(月曜~金曜)
■ ホームページ https://www.culture-night.com/
■ Facebook https://www.facebook.com/CultureNightHokkaido/

今後の開催予定

カルチャーナイト2018は2018年7月20日(金)に開催。最新情報やプログラムの紹介は団体ホームページかFacebookへ。賛同する施設・団体の募集は2018年4月3日(火)まで。申込用紙は団体ホームページよりダウンロード可能。問い合わせはメールや電話、FAXで受け付け。

取材を終えて

お話の中で「カルチャーナイトは面白い!と必ず思えるほど、たくさんのスイッチがあります」という言葉がありました。生活や興味にあわせた自分なりの参加の仕方を探すことで、楽しみながら自然と地域につながっていくことができます。住む街への愛着を再確認できるこのイベントを、毎年楽しみに待っている人たちの想いと共に、札幌でのカルチャーナイトが長く続いていくこと願っています。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2018年3月1日現在の情報です。