エゾシカの現状を知り、命の尊さ感じてほしい
道内では年間約12~3万頭のエゾシカが捕獲され、うち大半のエゾシカが廃棄されているといわれます。こうした現状を食育や環境とつなげて学ぶことで、エゾシカについてもっと知ってほしい―。その想いを伺いました。
特定非営利活動法人エゾシカネット
理事長 水沢裕一(みずさわゆういち)さん
エゾシカの生態や現状を、動物の専門家ではなく一市民の立場から市民に広めていきたい、という理念のもとエゾシカネットを立ち上げる。子どもから大人までを対象に、エゾシカの有効活用に関する事業に取り組み、北海道の環境保全、地域・まちづくり活動を積極的に行う。
北海道の貴重な資源であるエゾシカ。廃棄は「もったいない」
―エゾシカネットを立ち上げた経緯を教えてください。
道内でエゾシカの生息数が急激に増え始めたのは、およそ2、30年前だといわれています。それまでほとんど姿を見せないほどに減少していたエゾシカですが、オオカミの絶滅や繁殖力の強さから、再び生息数を増やしています。現在では推定45万頭が生息しているといわれ、そのうち捕獲されたエゾシカの大半は廃棄されています。こうした現実を知り、「命がもったいない」「命の大切さを市民に伝えたい」という思いを抱いたことをきっかけに、市民にエゾシカを取り巻く現状を知ってもらいたいと活動を始めました。
(写真左)円山動物園の飼育員からエゾシカの生態について説明を受ける参加者。(写真右)工作教室では、子どもたちもエゾシカの角の切断や艶出し作業を体験できる。命のつながりを大切にする心を育む
―エゾシカを通して、命について学ぶとは?
エゾシカの急増は、交通事故や農業、森林への被害といった多くの問題を引き起こすことになりました。そうした問題を人間中心の考え方から見るのではなく、エゾシカにも命があるわけですから、エゾシカと人間の「折り合い」の付け方、共存の在り方を考えていく必要があると思っています。エゾシカは北海道の貴重な資源です。命を失ったエゾシカを余すことなく活用することは、命の大切さや命のつながりを学ぶことになります。せっかくの命を捨てるのではなく、エゾシカ肉を料理して食べたり、エゾシカの角を使って工作するなどして命をつなげていくことで、子どもたちに命を大切にする心を養えればと考え、エゾシカの有効活用に関する事業を行っています。
(写真左)聞く人の五感に訴える、読みかたり活動。(写真右)料理教室で、エゾシカ肉のミジン切りに挑戦。エゾシカと食育をつなげ、市民同士がつながる場に
―具体的にどのような活動を行っているのですか?
エゾシカネットでは、小学生から参加できるシカ肉料理教室や、親子向け森林ツアー、エゾシカの角を使った工作教室、市民交流会などを開催しています。料理教室では、始めにエゾシカの生態や農業、森林への被害、そして自然環境を守る大切さについて話します。また、実物大のエゾシカの模型を見て大きさを実感してもらったり、本物のエゾシカの角に触れてもらったりします。その後、エゾシカの肉を使ってピザ、ミートソースや冷麺などを作り、皆で残さず食べてもらいます。その他にも、秋ごろにエゾシカの生態や環境問題について学ぶ親子向けの森林ツアーを開催しています。実際に森に入って森のことやエゾシカについて学ぶほか、食害防止ネットの巻きつけや植樹などの体験活動を行います。また、円山動物園での絵本ワークショップや市民交流会も人気です。私たちは、子どもたちに命を大切にする心や地球環境への意識という「種をまく」ことが地球を守ることにつながると考えています。もちろん、大人だけの参加も歓迎です。様々な人が集うことで、市民同士のつながりが広がるような場にしていきたいと考えています。
―今後の目標は?
市民の集まりなので大きなことはできませんが、コツコツと活動を継続していくことが目標です。私たちの住む札幌、北海道に生息するエゾシカや森林という貴重な資源に目を向けることで、市民が命の尊さを学べる活動をしていきたいです。
特定非営利活動法人エゾシカネット (団体ページへ)
■ 住所 | 札幌市東区北25条東15丁目2番18号 |
■ 電話 | 090-9524-1232 |
■ FAX | 011-711-5868 |
■ メール | ztd05304@nifty.com |
■ ホームページ | http://ezoshika.net/ |
https://www.facebook.com/ezoshika.net/ |
今後の開催予定
夏・冬休みなどにシカ肉料理教室、シカ角工作教室を各区で行うほか、森林ツアー、ごみ拾い活動など様々なイベントを定期的に開催。詳細は団体HP に随時更新。参加の申し込み・問い合わせはメール、FAXで受け付け。
取材を終えて
エゾシカと人間の関係性を見直すことで、生き物同士の命のつながりや命の尊さに想いを馳せてもらいたい―。食育とエゾシカをつなぐ活動の背景には、そうした想いがあることに取材を通して気づきました。エゾシカ肉で子ども達が大好きなチャーハンやピザを料理したり、エゾシカの角を使いキーホルダーやアクセサリーなど思い思いに工作したりと、子どもが気軽に参加できるプログラムが多く、魅力だと感じました。
※2017年12月6日現在の情報です。