「麦わら細工」と「次世代」をつなぐ

ものづくりを通してつながる想い
麦わら細工の歴史と魅力を、伝え広げたい

札幌村文化センター麦わら細工の会 代表 土肥信子(どいのぶこ)さん

札幌の農家などには、処分するはずの麦わらを利用した「麦わら細工」という手工芸が今に残されています。黄金に輝く麦わら細工の魅力を伝え、札幌の手仕事の歴史と伝統を次世代につなぎたい―。その想いを伺いました。

札幌村文化センター麦わら細工の会
代表 土肥信子(どいのぶこ)さん

札幌村文化センター麦わら細工の会代表。NPO法人として農業体験活動をする中で出合った麦わら細工の美しさに魅せられ、活動を始める。さっぽろライラックまつりでは市民に向けた麦わら細工体験を行い、後継者育成活動や子どもへの体験教育、手工芸文化の伝承に力を注ぐ。

黄金の輝きに魅せられ、活動を開始

(写真左)北海道江別産の小麦「春よ恋」の麦わらで作ったカゴ。(写真右)さっぽろライラックまつりで、雪の結晶を作る子ども。 (写真左)北海道江別産の小麦「春よ恋」の麦わらで作ったカゴ。(写真右)さっぽろライラックまつりで、雪の結晶を作る子ども。

―麦わら細工の会を立ち上げた経緯を教えてください。

 NPO法人として親子で農業体験を行う活動をしていた頃、農家で長く受け継がれてきた麦わら細工に出合いました。その時、麦わら細工の麦わらが折れた部分に光が当たり角度によって黄金に輝くのを見て「これは宝だ」と感じ、「この手工芸文化を守っていきたい」と思いました。その後、NPO法人の活動内容を麦わら細工の継承活動に絞り、2011年に「札幌村文化センター麦わら細工の会」に団体名を変更、NPO法人を解散しました。これまで、麦わら細工の体験講座などを継続的に開催し、札幌の手仕事の歴史や大切さを伝える活動を行っています。

―麦わらの魅力は何ですか?

 麦わらは、栽培地や収穫してからの年数によって、その色や輝きが変わってきます。収穫後2~3年経った黄金色の麦わらが最も美しいと言われますが、何十年と経過し灰色になった麦わらの色も深みがあって魅力的です。光を反射してキラキラと輝く様は本当に素晴らしく、麦わら細工のアクセサリーを身につけていると通りすがりの人の目を引くほどです。また、麦わらはさまざまな形に変えられることも魅力です。麦を編んだカゴやアクセサリー、麦わらを通したメガネチェーン、麦わらを入れた万華鏡などデザインや用途の幅は広く、日常の中で見るものすべてが作品のアイデアになります。

札幌に残る手仕事を、次世代につなぐ

(写真左)児童会館で子どもたちが麦わら細工に挑戦。どの子も集中し真剣な表情に。(写真右)完成した指輪。麦わらは磨くと柔らかい光を放つ。 (写真左)児童会館で子どもたちが麦わら細工に挑戦。どの子も集中し真剣な表情に。(写真右)完成した指輪。麦わらは磨くと柔らかい光を放つ。

―麦わら細工を次世代につなぐとは?

 さっぽろライラックまつりに毎年参加し、作品の展示と市民向けの手作り体験を行っています。これまでに麦わらを使って雪の結晶や馬のモチーフを作りました。また、幼い頃の経験が文化継承には重要だという思いから、子ども向けのワークショップを児童会館で継続的に開催しています。手作りに取り組むことは、子どもの成長にも大きな影響を与えます。ワークショップでは、活動に参加しているメンバーが1対1で子どもと向き合い、15分ほどかけて指導して作品を完成させるのですが、それだけで子どもは変わります。例えば、すぐにけんかをしてしまう子どもがいたのですが、その子はじっくりと作り方を教わり「良くやったね」と作品の完成を喜んでもらい、帰るときに名前を呼ばれて声をかけられると、嬉しさからか涙声になって「なんで名前を覚えているの」と言いました。何度か継続して関わると周りへの態度も変わり、きちんとあいさつのできる子どもになっていきました。ものづくりを通した子どもの成長は、活動の大きな励みです。

―運営メンバーにはどのような方が関わっていますか?

 子育て中の主婦や、仕事をしながら活動に参加している方が中心です。麦わら細工という貴重な文化を継承していくために、細々と活動を続けています。なかなか大きく前進はできませんが、根気よく続けていきたいと考えています。

後継者の育成と子どもへの文化伝承が目標

―今後の目標はありますか?

 文化の継承や後継者の育成には、労力や資金が必要です。資金や人材が限られた中での活動には困難もありますが、さっぽろライラックまつりでの体験活動や子どもへの体験教育を通し、麦わら細工を次世代につなげ広げていくことを目指していきたいです。また、文化継承の担い手となる後継者を育て支える活動も、積極的に行っていきたいと考えています。

札幌村文化センター麦わら細工の会 (団体ページへ)

札幌村文化センター麦わら細工の会
■ 住所 札幌市市民活動サポートセンター気付レターケース番号91
■ FAX 011-728-7280
■ ホームページ http://sapporomura.info/
■ Facebook https://www.facebook.com/village.sap/

今後の開催予定

毎年5月中旬に開催されるさっぽろライラックまつりで行う麦わら細工体験は、今後も継続していく予定。活動への問い合わせは、FAXで受け付け。

取材を終えて

実際に作品を見せていただき、麦わらの黄金色に輝く美しさに驚きました。そして丁寧な手仕事に感動しました。市民団体が文化継承活動をしていく難しさについてもお伺いし、多くの市民を活動に巻き込み市民同士でつながっていくことが大切だと感じました。子どもが手工芸に取り組む中でメンバーや周りの方と信頼関係を築いて成長していくというお話には、子どもの素直な心に想いが及び、目頭が熱くなりました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年12月15日現在の情報です。