寄付という市民力

未来を紡ぐ人
北海道で最初の認定ファンドレイザー、奥山大介さんにお話を伺いました。

日本ファンドレイジング協会 北海道チャプター代表 奥山大介さん

日本ファンドレイジング協会
北海道チャプター代表 奥山大介(おくやまだいすけ)さん

公益財団法人札幌交響楽団 総務営業部 営業担当マネージャー。
2006年、財団法人(現 公益財団法人)札幌交響楽団に勤務。チケット販売・定期会員担当を経て、2008年より法人・個人のパトロネージュ会員(寄付会員)の担当として現在に至る。

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「共感」の先に、形として「寄付」が生まれるイメージです。

「ファンドレイジング」について学びたいというリクエストがあれば、各地へ講演に出かけるという奥山さん。講演には、NPOはもちろん中間支援センターや市民ボランティアの方も参加します。 「ファンドレイジング」について学びたいというリクエストがあれば、各地へ講演に出かけるという奥山さん。講演には、NPOはもちろんNPO中間支援センターや市民ボランティアの方も参加します。

―「ファンドレイジング」とは、どのようなことでしょう?

 非営利活動をしている団体が、必要な資金であったり資源であったり、そういったものを支援者の「共感」をいただいてお預かりする活動をそう言っています。
 最終的には、その共感していただいた形が「お金」であったり、「マンパワー」かもしれませんし、「場所の提供」、もしくは「告知」、いろいろあると思うのですが、極端な話、ご寄付をいただいても、寄付をしてくださった方がそのお金が何に使われたのかわからないと、そこで次がなくなってしまいます。

 ファンドレイジングに関しては「認定ファンドレイザー」という日本ファンドレイジング協会が運営する資格制度がありますが、その重要な目的のひとつに、「日本に寄付文化を根付かせよう、浸透させていこう」という大きなテーマがあります。寄付してくださる方、社会のためにご自身の心を託してくださる方が、「また、自分の気持を預けたい」と思ってくださることが重要であって、ただ「お金をいただこう」「もらって終わり」では次につながりません。団体、もしくは活動への「共感」があったところに形として「寄付」というお金が入ってくる、というようなイメージで活動しています。

認定ファンドレイザーとは

寄付者の「ファン度」が上がることが、活動の成長につながります。

「ファンドレイジング」への関心の高まりから、2016年には札幌市内のオートリゾート滝野で、日本初の「ファンドレイジングキャンプ」も開催。 「ファンドレイジング」への関心の高まりから、2016年には札幌市内のオートリゾート滝野で、日本初の「ファンドレイジングキャンプ」を開催。

―ファンドレイジングの視点から、まちづくり活動を捉えると?

 一番最初に重要になってくることは、自分の団体や活動のミッションであったり、ビジョンであったり、目標を、自分たちがしっかり共有できているかどうか。そして、それをきちんと人に伝えることができるか。それが、本当に社会の役に立つのか。伝えた時に、本当に共感していただける内容なのか、ということを考える必要があります。

 そうすると、自分たちの活動についての強みやポジションが必然的に見えてきて、財源的なところよりは団体のいろいろな基盤が強化されるきっかけになる。そして、実際にご寄付をいただくと、寄付してくださった方がその団体について、より意識をして見てくださるわけです。「見られている」ということは、いい意味で「応援してもらっている」「一緒にやっている仲間が増える」ことになるので、自分たちの活動が、本当に人からきちんと評価してもらえる活動なのかどうかを考えるきっかけにもなる。

 そうしたファンドレイジングの入口が、まちづくりや市民活動にとってより良い効果を生むのではないかと思います。もちろんその結果、寄付が集まり財源となれば、今やっている活動をより深める、広げる、充実させることにもつなげていくことができるということになります。

―ファンを増やす、ということですね。

 はい。ファンドレイジング界隈の仲間たちで、よく「ファン度レイジング」と言うのですが、ファンの度合いが上がっていく、寄付してくださる。それが循環して財源=お金が生まれて、団体の基盤も「自分たちでもう一度考えてみよう」と見直しがかかる。そうするとまたファンの方も増えて、スパイラルといいますか、自分の団体・自分たちの活動が成長していくことにつながっていきます。

「思いに合った支援」を、誰もが「選べる」ことが大切です。

―「認定ファンドレイザー」の目的としてお話に出ていた「寄付文化」とは、どのようなことですか?

 今、「ファンドレイジングについて話してください」というお声がかかることが多く、非常にありがたいことだと感じております。しかし、本当に目的とすべきところは、極端な話、私に声がかからなくなるような社会が理想だと思います。
 大勢の人がファンドレイジングについて語れる状態になっていて、「この分野ならあの人かな」という事例もいろいろできて、「ファンドレイジングのセミナーは、開かなくてもいいよね」という状態になるのが本当は一番いいな、と思っています。

―「寄付」が「文化」になる。

 はい。寄付って、寄付を受け取ってお預かりする側が、寄付についての正しい知識、正しい倫理観を持っていることが大前提なのですが、実は、寄付をする方も、寄付について詳しく知っていると、より寄付者自身にとっていい寄付ができるんですよね。
 寄付をした時に自分の思ったように使われていない、例えば「寄付はしたけれども、(そのお金は)どこにいったかわからないわ」ですとか「寄付はしたけれども、ちょっとそういうつもりではなかったんだけどな」と思ってしまうと、残念じゃないですか。

 自分の身近なところで何か災害が起きた時に、その地域の「道を直したい」と思う人もいれば、「子どもの支援をしたい」、「高齢者の方の生活を守りたい」と思う方もいらっしゃると思うのです。その時に、「災害に対する寄付」というところだけでポンと(寄付を)入れてしまうと、どこに使われているかがあまり見えなかったりします。そんな時、「私たちはそういう地域の子どもたちに、食べ物を届けています」「寝袋を届けています」など、いろいろな団体さんがいらっしゃるので、より自分の思いにフィットしたアプローチをしている市民活動団体を見つけることができれば、実感として「誰かの役に立てた」という思いをさらにダイレクトに感じられると思うのです。

―寄付者自身にも選ぶ意識が必要、ということですね。

 その方が、寄付者の方がハッピーになれますので。そのためにはまず、寄付をお預かりする側がきちんと成果を出す、最初はそこからですよね。

日本ファンドレイジング協会 北海道チャプター (団体ページへ)

日本ファンドレイジング協会 北海道チャプター

代表:奥山 大介(認定ファンドレイザー)公益財団法人札幌交響楽団
副代表:佐藤ゆみ子(准認定ファンドレイザー)特定非営利活動法人コンカリーニョ理事


日本ファンドレイジング協会の地域支部組織。北海道の市民・行政・非営利セクター等に対し「ファンドレイジング」への理解を促進させることにより、道内の文化・福祉・市民活動等社会的基盤の向上、変革を図ることを目指しています。現在、58名の会員が参加しています。
※日本ファンドレイジング協会会員となることで、北海道チャプターの活動に参加することができます。

日本ファンドレイジング協会

 2009年、日本全国47都道府県から580人の発起人の賛同を受け、善意の資金(寄付から社会的投資までを含む)10兆円時代の実現を目指して設立。民間非営利組織のファンドレイジング(資金集め)に関わる人々と、寄付など社会貢献に関心のある人々のためのNPOとして、認定ファンドレイザー資格制度やファンドレイジング・日本、寄付白書の発行などに取り組んでいます。

(取材・文・編集 総合商研株式会社)
※2017年1月13日現在の情報です。