クラフトビールでまちと人をつなぐ
個性あふれる多様な味わいを楽しめるクラフトビールの世界。その魅力を核に、ビールに縁の深い札幌でビールを通じてまちや人をつなぐ活動を行う思いを「清田区20周年記念オリジナルビール」を監修した坂巻紀久雄さんに語っていただきました。
清田区20周年記念オリジナルビール
監修
坂巻紀久雄(さかまききくお)さん
全国でも数人しかない2年連続の日本ビール検定1級合格者で、札幌市内でビールとウイスキーの専門店「Maltheads(モルトヘッズ)」を営む。豊富な知識と業界に精通する情報を生かし、市内のクラフトビールのブルワリーや飲食店仲間とより多くの人にクラフトビールを楽しんでもらえる機会づくりを目指したイベントの開催や、オリジナルビールの開発に携わるなど、ビール文化でまちを動かす開拓者として活躍している。
新たに根付きつつあるビール文化。札幌を日本のビール文化の首都に。
90年代半ばに全国各地で巻き起こった“地ビール”ブーム。それから20年ほどたったここ数年、新たな動きが出てきました。それが“クラフトビール”です。かつて“地ビール”と呼ばれていたビールは「造り手の姿勢や個性が息づくビール」「人の手技が生きているビール」ということで、“クラフトビール”という新たな名称で呼ばれ、その輪は全国に広がり、一つの文化として根付きつつあります。国内でも冷涼な札幌は、ヨーロッパ内でもビール造りの盛んな地域と似た気候風土で、日本におけるビール産業の発祥地の一つです。さらに国内主要メーカーのビール工場があり、夏には国内最大級のビアガーデンも開催されています。姉妹都市のミュンヘンはビールの都として知られ、同じくアメリカ・ポートランドも市内に70以上ものビールの醸造所がある世界有数のビールのまちだったりもするんです。そういう意味でも、札幌は本当にビールと縁の深いまちなんですね。いつものビールの他にも味や香り、色味やアルコール度数が自由に豊かに広がっていくクラフトビールもこの札幌で楽しんでほしいというのが私の思い。地元のファンを増やし、その輪を広げていくことで、ゆくゆくは札幌がクラフトビールを含む日本のビール文化の首都になっていけたらと日々取り組んでいます。
ストーリーのあるモノづくり、コトづくりが、街と地域を楽しくする。
2017年、実は私が清田区の誕生した日に初めて婚姻届を提出した婚姻届第一号だったこともあって、きよたまちづくり区民会議のメンバーから声を掛けていただき、清田区が誕生20周年を迎えることを記念した「清田区20周年記念オリジナルビール」造りに関わりました。この事業は最初から簡単に進んだわけではありませんでした。何といってもビールの醸造には免許が必要ですから。そこでクラフトビール仲間であり、当時市内で唯一マイクロブルワリー(小規模醸造所)を持つビアパブを経営する森谷祐至さんに協力を依頼。快諾してもらえたことで醸造への道のりが開けたのです。また、原料についても時期の関係で地元の特産物が使えないという問題がありました。特別な原料を使わずに造るにはどうしたら良いか。思案した上でたどり着いたのが「LAT43」というビールでした。清田区には妻の実家があり、何度か来ていたことで清田区役所内に北緯43度線が走っていることを知っていたんですね。それで、この“43”をキーワードにビール造りのストーリーを組み立てようと考えたのです。クラフトビールの中では“セッション”と呼ばれる度数の低いモノがトレンドでもありましたから、“43”にちなんでアルコール度数を4.3%に設定。ストーリーを持たせたことで興味を持って「飲んでみたい」と思ってもらえるモノにつながったと思いますし、区の皆さんに喜んで飲んでもらえたことが何よりうれしかったです。
クラフトビールがつなぐ、まちと人。その道筋をつくれたことがうれしい。
2年目となる今年は、1年目にはできなかった地元の特産物を使ったビール造りにチャレンジ。監修を森谷さんに引き継ぎ、清田区有明産のイチゴを用いたビール醸造を行いました。森谷さんやビールを提供する「きよたマルシェ&きよフェス」に出演する清田区出身のアーティスト、そして区の職員がイチゴの収穫からネーミングまでを行い、名称は清田区産のイチゴ、札幌産のエールビールが永遠に栄えてほしいという思いから、ビートルズの名曲にちなんだ「ストロベリー・エールズ・フォーエバー」と名付けられました。私やビールの造り手だけでなく、区民や区の職員も一緒になって造った清田区のクラフトビールは、まちのビール文化として新たな一歩を刻んだのではないかと思いますし、私自身もその最初の道筋づくりに関われたことに喜びを感じています。清田区での経験によって、クラフトビールには味や香りなどの種類が豊富なだけでなく、人の輪もどんどんとつないでくれる可能性があると実感しましたし、これからもさまざまなカタチで広げていきたいと思っています。
(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。
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