特定非営利活動法人 札幌オオドオリ大学

街に開かれた学びの場で人をつなぐ

札幌の街をまるごとキャンパスに、市民が先生になって教える「札幌オオドオリ大学」。多くの市民と交流してきた視点から、その生涯学習の魅力を理事長の猪熊梨恵さんに話していただきました。

街や生活への興味につながる、
発見や気づきの共有を

特定非営利活動法人札幌オオドオリ大学
理事長

猪熊梨恵(いのくまりえ)さん

2006年に立ち上がった生涯学習プログラムを提供するNPO法人「シブヤ大学」のノウハウを移転し、姉妹校をという動きが札幌へ。社会人1年目でこの市民大学づくりのメンバーになる。志願して学長に就任し、2010年に「札幌オオドオリ大学」開校。2012年、NPO法人化に伴い理事長に。小学生から80代まで、3,000人以上が生徒として登録し、先生には300人以上が関わってくれている。

街をキャンパスに、市民が教え、市民が学ぶという学びの連鎖に共感。

札幌オオドオリ大学は、札幌およびその周辺都市や地域を舞台に、幅広い世代の一般市民の皆さんへ向けて街や暮らし、芸術や文化、社会教育など、多彩なテーマの学びの場を提供しています。ですから、授業には年齢や職業もさまざまな生徒が興味のあるテーマを選んで、学びたいという積極的な思いを持ってやって来ます。一方、先生も普段教えることを仕事にしていない、一般市民の方が大半なので、いざ教えるとなると改めて勉強をすることになります。そうやって皆さんが興味のあるテーマを学び合うという学びの連鎖が起きるんです。大学を立ち上げることになった時、まずその仕組みに共感しました。こうした学び合いの中で、市民の方々がそれぞれ新たな気づきや楽しみを見つけられたり、街への関心を高められたりと、あらゆる世代の人たちが生涯にわたって学ぶことを楽しんでもらえたら。同じ興味を持つ人たちと出会ったり、地域社会との関わりを持ったりと、毎日生き生きと過ごす一助になればと思います。

今こそ、関わり合ってコミュニケーションすることで発見や気づきを。

オオドオリ大学の授業は、円山公園に花壇を作ったり、大通の三吉神社の例大祭の行灯(あんどん)をデザインして作ったりという街と関わる授業、地元の食を学ぶ授業、北海道の自然や文化を考える授業、フリークライミングをはじめとするスポーツの授業など、テーマが多岐にわたっています。最近の授業では博物館や美術館で販売されている記念グッズについて考える「新(珍)ミュージアムグッズの未来形」や、「31文字になにを込める?」という短歌の授業などを企画しました。一つの授業での生徒さんの募集人数は15人くらい。あまり人数を多くせず、初めて会っても顔と名前が一致するくらいの人数で、名前を呼び合って会話できるような授業を目指しています。今の時代は人と人との関わりが希薄になっているので、授業ではいろいろな人と関わり合って、自分の意見を伝えてもらうことを大切にしています。関わった方が「断然面白い!」。そう感じてもらいたいんです。

“卒業しない大学”として街にあり続け、市民の皆さんと歩んでいきたい。

転勤した人が札幌へ戻って来て、「まだ活動しているんだ?」「また参加したい!」と言ってくれたり、オオドオリ大学は“卒業しない大学”なので、街にあり続けることで出会いの機会も続いていきます。2019年で9年目を迎えますが、その間に私も結婚し、子どもも生まれましたが、参加いただいている生徒さんもライフステージが変わったり、興味を持つ範囲が広がったり。長く続けてきたことで一緒に変化しているのを目の当たりにできることも面白く感じる部分ですね。今の社会には、好きな場所、得意なことができる場所、家族以外の大人から学べる場所が少なくなってきているように感じますし、子どもができてからは「いろいろな視点を与えてくれる場所をつくりたい」という思いが、より一層強くなりました。授業は1回きりのものが多いですが、今後は一つの問いを共有して一緒に考え、答えを見つけていく中長期的に取り組むプロジェクト的な取り組みを行っていきたい。さらに同じテーマを持った人たちのコミュニティのような活動も実施していきたいと思っていますので、新年度からも楽しみにしていてください。

(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。