「ごみ拾い」と「地域」をつなぐ

スポーツがつなぐ絆
ごみ拾いをスポーツに!参加型ボランティアイベントで地域貢献

特定非営利活動法人 北海道スポーツGOMI拾い連盟 理事長 小西和孝(こにしかずたか)さん

従来のごみ拾いのイメージをくつがえす「スポーツGOMI(ごみ)拾い」。誰もが気軽に参加でき、参加者・ボランティア・地域住民をつなぎ笑顔にする「地球に最も優しいスポーツ」を北海道で行いたいー。その想いを伺いました。

特定非営利活動法人
北海道スポーツGOMI拾い連盟
理事長 小西和孝(こにしかずたか)さん

北海紙管株式会社取締役専務執行役員。2011年に東京で開催されたスポーツGOMI拾い(スポGOMI)に参加したことがきっかけで、同年、実行委員会を発足、秋に北海道では初となる札幌大会を開催。2015年に団体を設立し、理事長を務める。

「スポーツ」で「ごみ拾い」が変化、生み出された新しい価値観

(写真左)小さな子どもからお年寄りまで、体格や体力に左右されず、誰もが気軽に参加できるスポーツというのが特徴的。(写真右)制限時間内に集めたごみの種類や量によって得点が決まるルール。最終的な総重量は一つの大会で平均300kg以上にも及ぶ。 (写真左)小さな子どもからお年寄りまで、体格や体力に左右されず、誰もが気軽に参加できるスポーツというのが特徴的。(写真右)制限時間内に集めたごみの種類や量によって得点が決まるルール。最終的な総重量は一つの大会で平均300kg以上にも及ぶ。

―スポーツGOMI 拾い(スポGOMI)を北海道で立ち上げたきっかけを教えてください。

 今でこそ印象は良くなったものの、どちらかというとリサイクルやエコに対してマイナスイメージを抱かれることが多く、まずイメージアップを図りたいという想いがありました。本業がリサイクル事業を中心とするようになったこともあり、地域貢献をしたい、そしてただ一方的に発信するだけでなく、地域と交流できる場を持ちたいと考えていました。そんな折、偶然テレビでごみ拾いにスポーツ要素を取り入れたスポGOMIを知って興味を持ち、2011年に先駆けとなった東京の一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブに相談してみたんです。まずは実際にやってみようと思い、すぐに家族で東京の大会に参加することにしました。子どもたちもまだ小さく、家族も最初は乗り気では無かったのですが、いざ大会が始まると家族全員が時間を忘れて夢中でごみを拾っていました。大会がもう終わっているにも関わらず、帰り道に子どもたちが無意識にごみを探す様子を見ているうちに、「小さい頃にごみを拾う経験をすることで、将来ごみを捨てない大人になるかもしれない」という強い想いが生まれ、その年に札幌で大会を開催することを決意しました。

―スポGOMIの魅力は何ですか?

 「スポーツで街をキレイに!」をテーマに、誰もが楽しみながら気軽に参加でき、義務感などネガティブイメージが強いごみ拾いというボランティア活動を、ポジティブな経験に変換できることですね。ごみ拾いではありますが、スポーツとして選手宣誓やチームごとの作戦会議も行います。限られた競技エリアで、60分という制限時間内にチームワークを発揮しながらごみを集め、その量と種類で得点を競います。普段は意識しない道端のごみが得点となるため、まるで宝探しをしているような感覚になり、ごみへの価値観が変わることも魅力の一つです。

(写真左)スポーツマンシップにのっとり選手宣誓も。計量後にはごみ拾い証明書も発行される。(写真右)50以上のチーム約300人が限られた競技エリア内で競うため、作戦会議でルートの確認作業や役割分担などが重要に。 (写真左)スポーツマンシップにのっとり選手宣誓も。計量後にはごみ拾い証明書も発行される。(写真右)50以上のチーム約300人が限られた競技エリア内で競うため、作戦会議でルートの確認作業や役割分担などが重要に。

ごみ拾いを通じて、地域、人、街をつなぐ

―「ごみ拾い」と「地域」をつなぐというのは?

 今年で7回目を迎えた札幌大会ですが、実は第2回大会までは札幌市内中心部での開催でした。住宅地ではなかったため地域との連携の部分で疑問を感じていたところ、翌年に初めて地域の商店街からお話を頂き、豊平区で開催した際に「ごみを拾うことで街を知ってもらう」ことを実感しました。それ以降も大会の開催地によっては、商店街に足を運んでもらうためにチェックポイントを設けたり、ランチクーポン付きの飲食店マップを作成した結果、120名の参加者に利用してもらった実績もあります。住民にとっても地域の魅力を再発見し、愛着を深めることにもつながると考えており、2014年から大樹町や清水町でも大会を実施しています。また、今年は札幌大会の前に西区の皆さんが積極的に動いてくれ、小学校の敷地内でプレ大会を開催しました。大会というと身構えてしまうかもしれませんが、学校や町内会など小さな規模から、みんなで意識して社会からごみを減らしていくきっかけ作りになればと考えています。スポGOMIの活動を通じて地域に貢献し、今度はその経験したノウハウを地域の方々で活かして頂ければ嬉しいですね。

―運営にはどのような方が関わっていますか?

 実行委員会のメンバーは北海紙管の若手社員が中心ですが、サポーターとして運営に協力してくれるボランティアスタッフや、当日参加者チームに一緒に入ってもらうパートナーと呼ばれる審判を募集しています。現在は札幌市内の大学生も運営に参加し、前年に出た問題点を改善するためのリハーサルやシミュレーションに携わり、実際にごみの計量や採点にかかる時間を大幅に削減するなどの成果をあげています。今後も賛同してくれる大学があれば、一緒に取り組んでいきたいです。学生にとってもインターンシップのような形で社会経験を積む機会になれば嬉しいです。大会の運営は仕事ではないのですが、約300人の参加者を笑顔で迎え入れ、事故などがないように配慮することはホスピタリティにつながり、運営の仕方やマネジメントをスポGOMIという活動を通じて学んで頂ける場になると考えています。

―どんな方が参加されていますか?

 子どもからお年寄りまで年齢層は幅広く、リピーターはもちろん、札幌での観光がてら本州から参加される方もいる他、企業でチームを作って参加している方も多いです。今年は特に、期間限定でベトナムから日本の企業に来ている外国人技能実習生の皆さんが日本の文化に触れた思い出作りの目的で参加し、インターナショナルな大会となりました。スポGOMIは日本発祥のスポーツですが、近年ではロシアや韓国でも実施されています。今回参加した皆さんがベトナムに持ち帰ることで、また広まっていけば嬉しいです。

ごみがなくなれば拾う必要がなくなる、それが理想形でありゴール

―活動を続ける上で、今後の目標はありますか?

 偶然にも2020年のオリンピックイヤーに第10回大会を迎えるため、その区切りとして北海道各地で行われる大会を勝ち抜いたチームが秋に札幌に集結し、全道一を決定するスポGOMI甲子園を実施したいと考えています。来年以降、札幌以外の大会をもっと開催できるように働きかけることが今の課題です。今後は自治体や商店街などが中心となって、規模に関わらず積極的に大会が行われることが理想ですね。また、全国でスポGOMIの活動を行っている団体が各地に存在するので、ゆくゆくは全国大会を開催する構想もあります。しかし、そもそもごみがあるからごみ拾いが必要なのです。この活動を通じて地域にもっと関心が高まることにより、ごみが捨てられない社会になればと考えています。矛盾しているようですが、この活動自体がなくなることが最終的な目標です。

特定非営利活動法人北海道スポーツGOMI拾い連盟 (団体ページへ)

特定非営利活動法人北海道スポーツGOMI拾い連盟
■ 住所 札幌市清田区清田1条1丁目7番23号
(北海紙管株式会社内)
■ 電話 011-882-7761
■ FAX 011-882-0077
■ メール spo-gomi@hokkai-s.co.jp
■ 時間 9:00~17:00
■ ホームページ http://www.hokkai-s.co.jp/spogomi/
■ Facebook ほっかいもっかい杯スポGOMI in 札幌(スポごみ)

今後の開催予定

年一回秋に札幌と北海道内で大会を開催しており、2018年は西区で実施予定。開催に興味のある自治体や団体などを募集中。参加者や審判、運営サポーターの募集や説明会、大会日程など今後の活動については、団体のホームページまたはFacebookへ。問い合わせはメールや電話で受け付け。

取材を終えて

参加されたお子さんが大会後に「ここはごみ拾いをした街だね」と言ったというエピソードにも表れるように、制限時間60分の中で参加者はごみを拾いながらエリアとなる街をよく見ています。ごみ拾いと地域がつながり、街を知ってもらう機会が生まれる他、その地域に住む人々にとっても、あらゆる角度から街を再認識できるきっかけとなります。単なる美化活動ではなく、街を舞台に人々の笑顔が溢れる素晴らしい活動だと感じました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2017年11月2日現在の情報です。