市民による食を通じた福祉活動



大量に廃棄される余剰食品を集めて、ボランティアスタッフとともに福祉施設や生活困窮家庭に寄付する「ハンズハーベスト北海道」。理事長の小山邦子さんに、活動に取り組む思いを伺いました。
特定非営利活動法人ハンズハーベスト北海道
理事長
小山邦子(こやまくにこ)さん
困窮者支援活動団体「みなずき会」にて炊き出しなどの活動に15年以上関わる。2008 年「ハンズハーベスト北海道」を設立。代表としてボランティアスタッフとともにフードバンク活動を展開。2014年6月に法人化し、理事長に。大量に廃棄されている安全性に問題のない食材を無償で提供してもらい、必要とする個人や団体に無償で配送する活動に取り組んでいる。
余った食品を集めて、福祉施設や生活困窮家庭に寄付する取り組み。
私は2002年から、ホームレスへの炊き出しをボランティアで行っていました。そこで少しでもおいしいものを食べさせたいという思いから、市民の皆さんに食材をくださいと呼び掛けたところ、多くの食品が集まり余ってしまったのです。もともと福祉関係の仕事に携わっていたため、さまざまな施設に顔が広く、余った食品を知り合いの施設に寄付すると大いに喜ばれました。そこから食品を集めて寄付する活動は広がり、2008年に「ハンズハーベスト北海道」を立ち上げたのです。
食品を提供していただいているのは、市民の皆さんはもとより、食品製造業やスーパーをはじめとする食品小売・卸売業の企業、農家の方々など。製造系の企業からは検品ではねられたものや包装破損品などを、流通系の企業からは在庫入れ替え品や余剰在庫品を、農家の方々からは規格外品や余剰収穫品を、市民の方々からは贈答品の余りやまとめ買いの余りなどをご提供いただいています。品質に問題がなく安全に食べられる食品でも、規格外やとれすぎなどで大量に処分されてしまう昨今。食品を無駄にしない取り組みは、とても大切なことだと思っています。

提供する側・される側から「ありがとうのシャワーを浴びています」。
ご提供いただいた食品は、児童養護施設、母子支援施設、障がい者施設など、30以上の福祉施設と母子家庭や生活困窮家庭にお届けしています。中には月形や余市、浦河など、札幌市外から取りに訪れる施設も。最近では、こども食堂への寄付も増えてきました。私たちは、特に生活保護を受けていない母子家庭に力を入れています。生活保護を受けていない母子家庭の生活はとても大変で、公営住宅に入居できていない家庭もあるんです。そういうお母さんたちを助けていきたいと思っています。
ボランティアスタッフが行っているのは、主に収集した食品を分けて配る作業。月1回のミーティングでメンバーのスケジュールを調整し、各々がマイカーを使って食品の引き取りやお届けをしています。この活動をしていてうれしいのは、皆さんに感謝されること。私たちは、いつも「ありがとうのシャワーを浴びています」と言っています。提供する側も提供される側も、お互いに「ありがとう」でつながっていくのです。

少子化の時代に一人で子育てしているお母さんをお手伝いしたい。
私は特に母子家庭を支援したいと思っていますが、その考え方は困窮者だから助けてあげるのではなく、一人で子育てしているお母さんのお手伝いをしたいという思いに基づいています。うちのメンバーにも少子化の時代に子育てするお母さんをお手伝いする気持ちで行くようにと言っていて、そのためにはお母さんと言葉を交わす時間も大切で、訪問した際は「元気かい?大丈夫かい?」と声を掛けるようにしています。
この活動では生活保護受給者を対象にしておりません。生活保護を受けている方から「食べ物がないから支援してほしい」という申し出があっても、「生活保護の扶助があるならその範囲で生活できるはず」とお断りし、不満の声もいただいています。でも本当に大変なのは、生活保護を受けずにギリギリの生活をしている人たち。どれだけ反対されても、この方針は貫いていこうと思っています。
食品を提供される方は個人の方も多く、毎月寄付してくれる方もいます。中には自分で買って持ってきてくれる男性の方がいて、必要なものをお願いすることも。その人は「喜びができました」と言って、時には出張先でお土産をたくさん買ってきてくれることもあるんです。そういう思いのこもった支援が、とてもうれしく思いますね。

(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。
食品を無駄にしないで
困っている人を助けたい