特定非営利活動法人さっされん

一人でも多くの障がい者が社会的に自立できるような支援を

札幌近郊に住む障がい者を支援する小規模作業所(現・地域活動支援センター)が連携し、交流できる場をつくりたい。事業所同士の情報共有や意見交換をはじめ、障がい者に対する社会の理解を促進するための啓発活動、下請け作業のあっせんや製品の販売機会の提供などを通じ、障がい者の社会的自立をささえる活動への想いを特定非営利活動法人さっされんの理事長、菊入一隆さんに伺いました。

特定非営利活動法人さっされん 理事長 菊入一隆さん

特定非営利活動法人さっされん
理事長 菊入一隆(きくいりかずたか)さん

特定非営利活動法人陽風会が運営する就労継続支援B型事業所「風の子さん太」の管理者。1999年に設立した風の子さん太が、札幌市障害者小規模作業所連絡協議会(現・特定非営利活動法人さっされん)に入会後、2007年から理事として関わりました。2015年に副理事長、2016年には理事長に就任し活動しています。

地域の障がい者をささえる小規模作業所が連携し、誕生した「さっされん」

―設立のきっかけを教えてください

昭和50年代から60年代にかけて、障がいによって働くことが困難な障がい者をサポートする福祉施設として小規模作業所が急速に増加しました。その背景には、昭和54年に養護学校(現・特別支援学校)が義務化したものの、その卒業生が社会に出ても一般企業の受け皿が整っていないため、特に重度の障がいがある方々の行き場がないという現実がありました。障がい者が地域の中で当たり前に生活し、就労する場の模索が全道的に起こりつつあったことに加え、この頃はまだ法律上の制度も障がい者や福祉に関しては手薄であり、国や行政に対して要望を出す際には作業所同士が連携する必要があったのです。そこで窓口を一本化し、横のつながりとして相互に親睦を深め、研修や増えつつある作業所への援助などの活動を行うために、1985年に任意団体、札幌市障害者小規模作業所連絡協議会を設立しました。それが現在の特定非営利活動法人さっされん(以下、さっされん)です。2002年に特定非営利活動法人となり、2011年には「札作連」というそれまでの略称から「さっされん」と名称を変更し、発足から2019年で34年目を迎えました。

障がい者の社会的自立を支援し、社会と障がい者をつなぎたい

―障がい者の地域活動や社会復帰をささえる活動について教えてください

さっされんの活動は大きく分けて2つあります。1つ目は、地域に住む在宅の障がい者や難病患者の生活支援に関する活動です。障がいによって働くことが困難な方々の社会的自立支援を行っている地域活動支援センターなどの事業所への支援が主な活動となります。事業所では、心身に障がいがあるために一般企業に就職することが難しい方々が、自立した生活を営めるよう作業訓練として、障がい者の豊かな感性や丁寧さから生まれる優しい温もりを感じられる手作り商品を製作したり、紙を折るなどの軽作業を行っています。そのため、さっされんでは商品の販売機会として各種バザーやイベント開催のほか、軽作業などの下請け作業のあっせんや紹介を行っています。また、各事業所に向けた専門家による研修や勉強会を行っています。例えば、社会保険労務士や税理士による情報共有、職員が利用者に接する際に役立てられるアナウンサーによる声と言葉のレッスン、障がい者を雇用している企業の担当者から実際の雇用形態や様子についての研修などです。その他、事業所だけでなく利用者を含めた交流会やボーリング大会、障がい者スポーツを体験するバスツアーなど事業所同士の相互交流活動を行っています。2つ目は、元気ショップの運営です。元気ショップは、2005年に当時の札幌市長と市民の対話(タウンミーティング)の中から生まれた「札幌市障がい者施設等製品常設販売所」です。その時に参加していた精神障がい者の作業所で働く方からの「自分たちが作った商品を多くの市民に買ってもらいたい」という要望で、2006年の障害者週間(12月3日~9日)に合わせて札幌市中央区大通に開設し、さっされんが運営団体となっています。札幌だけに限らず、釧路や函館を含む北海道内約180団体による約3,500種もの商品を販売しており、デザインや素材に工夫を凝らした日用品やかわいらしい手作り製品のほか、添加物を使用しない北海道産品にこだわったパンやお菓子など、体に優しく安心安全な食品を取り扱っています。また、店舗以外に各施設やイベントなどでも出張販売を行っており、障がい者製品の理解促進や工賃の向上を目指しています。その他、各種団体や企業と連携した共催事業、障害者週間に合わせたパネル展と製品販売会、コミュニティーFM三角山放送局の番組「飛び出せ小規模作業所」に事業所の職員や利用者が出演し、イベント告知や各種PR活動など「美味しい・楽しい・さっされん」をテーマに活動を続けています。

―障がい者の自立支援をささえる意義を教えてください

一般企業に就職して給料を得ることができれば一番良いのですが、それが難しい障がい者が多いのが現状です。事業所で販売用の製品作りや軽作業を行って収入を得ることで、「障がいがあるから働けない、働けないから生活できない」という考えをせず、自立できるよう支援する必要があります。中でも、企業で手が回らないシール貼りや箱付めなどの下請け作業は隙間産業だと考えられます。そのため、人的ネットワークを活用しながら各事業所と社会や企業をつなぐことで、障がい者が少しでも収入を得られるよう働きかけています。また、さっされんでは事業所に就職を検討している方の研修の受け入れも行っています。障がい者にとって普段作業している場所を離れ、異なる環境で指導を受けることは貴重な経験になり、さっされんとしても彼らの性格や特性を把握した上で企業に紹介できるため定着につながりやすいほか、就職後のトラブルのケアやサポートが可能なことがメリットです。さらに、障がい者に対して在庫管理や品出しなどへの人材雇用を検討している企業に合わせた研修を行い、事前にトレーニングをすることが即戦力を生み出すことにもつながります。軽作業についてもさっされんが企業との間に入り、作業の単純化などの調整をしながら事業所に振り分けたり、高等支援学校で販売職を希望する生徒には元気ショップで研修を受けてもらい、適性を見て採用するなどの橋渡しを行うことで、障がい者の自立を支援しています。

障がい者の社会的自立を支援し、社会と障がい者をつなぎたい (写真左)「さっされんトライアルバスツアー」では事業所の利用者が障がい者スポーツを体験しました
(写真右)「障害者週間パネル展」にて、各事業所の活動を紹介するパネルの掲示と製品販売会を開催

「障がいがあるから働けない」ではなく「障がいがあっても収入を得られる」支援を

―さっされんの活動にはどんな方が参加されていますか?

現在、事務局2人と元気ショップの店員9人、理事11人で運営しています。さっされんは特定非営利活動法人ですが、基本的に個人ではなく法人が会員です。会員は、主に札幌近郊に住む在宅障がい者の社会的自立支援を行っている通所型の地域活動支援センターです。一口に障がい者といっても、知的・身体・発達障害を含む精神障がい者、難病、各種依存症などそれぞれ支援している障がいなどの種類はさまざまで、札幌市以外にも岩見沢や北広島を含む73事業所が正会員です。その他、賛助会員の5事業所と個人会員4人を合わせ、合計84事業所などが加盟しています。

―運営メンバーの声を聞かせてください

2018年の「さっされんトライアルバスツアー」では、事業所の利用者が障がい者スポーツを体験しましたが、「通常、バスツアーなどに参加しても一般向けの内容だと利用者はついていくのがやっとなことが多い。利用者に合わせたペースでツアーが組まれているので十分に楽しめた」という声をいただきました。会員や利用者にとって効果的な企画をやり遂げた時にはやりがいを感じますね。

「障がいがあるから働けない」ではなく「障がいがあっても収入を得られる」支援を (写真左)各事業所で手作りされた約3,500種もの製品が並ぶ元気ショップ店内
(写真右)企業の店舗で行われた就労説明の研修会は、実際にどのように障がい者が働いているかを知る機会になります

これからも障がい者の社会的自立をささえるために

―今後の目標を教えてください

会員である事業所がスムーズに活動を続けられるよう、今後も障がい者への支援を続けていきたいです。また、元気ショップの売上げ増加も目標となっています。さっされんは社団法人のような形式であるため、会員や会費を増やすことが目的ではありませんが、事業所で作られる製品を販売することは障がい者についての理解促進や工賃の向上につながります。これからも会員を支援する活動をさらに続けることで、より障がい者の社会的自立をささえていきたいと考えています。

特定非営利活動法人さっされん(団体ページへ)

特定非営利活動法人さっされん
■ 代表者 菊入一隆
■ 住所 札幌市中央区南8条西2丁目5-74
市民活動プラザ星園202
■ 電話 011-205-0890
■ FAX 011-513-4233
■ メール 非公開
■ ホームページ http://sassaren.or.jp
■ Facebook https://www.facebook.com/sasaren2/
■ Twitter genkishop2(元気ショップ)
今後の開催予定

さっされんの活動の詳細はHPまたはFacebook、元気ショップについてはHPまたはTwitterへ。

取材を終えて

さっされんの活動は実に多岐にわたります。会員である事業所の形態も、そこで受け入れている障がいの種類もさまざまです。社会的自立支援には、地下鉄の乗り方やお金を見分ける訓練などの生活介助が含まれ、障がいによっても対応が異なります。事業所をサポートすることでひとりでも多くの障がい者が自立できるよう、また、障がい者が生きていきやすい社会づくりを目指し、あらゆる方面からアプローチし、ささえる活動に感銘を受けました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2019年10月29日現在の情報です。