狸小路に常設演劇場をつくる会

札幌の街に、再び寄席のにぎわいを

かつては札幌の街にもあったという寄席。その文化の復活を願い、有志で立ち上げたのが「狸小路に常設演芸場をつくる会」です。楽しい笑いの先にある夢とは? 副代表の福井拓史さんに教えていただきました。

狸小路5丁目を、和と笑いの
文化拠点にしていきたい

狸小路に常設演劇場をつくる会
副代表

福井 拓史(ふくいたくし)さん

高校の同級生らと共に、ボランティアで活動をスタート。2013年に旗揚げ公演を開催し、以降不定期での公演で実績を重ね、2019年にはいよいよ定期開催で寄席を楽しめるようになる。現在、事務局の代表が転勤中ということで、多方面にわたる活動の全てを担い、「狸小路に常設演芸場をつくる会」の顔として活動中。本業は事務所を構え、司法書士を営む。

落語ファンと一緒に、札幌の街にもっと寄席の文化を広げていきたい。

もともと熱烈な落語ファンという訳ではなかったんですが、代表と私の高校の同級生が落語家になって、真打昇進とともに「六代目春風亭柳朝」を襲名したんです。同級生が真打になったのはすごいことで、「これは応援しよう」と後援会をつくりました。彼の拠点は東京ですが、地元の札幌でももっと何かできないか、やるんだったらもう少し周りも巻き込んでとなり、北海道が好きで何度も独演会を開いている柳家三之助師匠を応援する団体と一緒に、落語を盛り上げていこうとなったのがきっかけでした。ここに札幌の寄席の発祥の地とされる狸小路商店街の方が加わり、昔のように常設の演芸場を構えて寄席の文化を復活させ、育てていこうと大きなビジョンを掲げることになりました。

本来の寄席の楽しみに、狸小路らしさを加えて、和が香るまちづくり。

狸寄席では、会場で飲食できることも魅力の一つです。寄席は本来、行儀よくというよりは弁当を食べたり、くつろいで見るものでしたが、今の寄席では基本的に飲食はできません。しかし、狸小路は商店街なので、近隣のお店とのつながりも大切にしています。会場での出店に協力いただき、こうした食まわりの充実はお客さまにも好評です。それともう一つ、和服にもこだわっていて着物でご来場いただいた方には、コーヒーやビールなどの1ドリンクをサービスしています。着物を持っていてもなかなか着る機会がないという方に、寄席に着物で行くというスタイルを楽しんでいただき、和の文化が活気づく一端を担えればと思っています。着物姿の人がたくさん集まる場所に、華やかですてきな雰囲気に狸小路がなればいいですね。せっかく着物を着たんだからと、寄席の前後にあちこちへ寄るというコミュニティーもできています。そんなふうにしてまち全体のにぎわいづくりができたら、というのももう一つのビジョンなんです。

目指すは、狸小路に落語家さんや芸人さんが憧れる常設演芸場の開設。

寄席は、2019年は年6回を予定。2020年には年12回の毎月開催を考えています。出演者も落語家さんはもちろん、漫才などの芸人さん、また札幌には手品師などのパフォーマーがたくさんいるので、その方たちの活躍の場として出演しやすい環境づくりができればとも思っています。そうすることで、もっと観客層が広がるでしょうし、舞台に足を運んでいただく方々には私たちが目指す思いに賛同してもらいたいですね。札幌ほどの規模や歴史を持つ都市なら演芸場があっても良いと思うんです。何年後になるかは分からないですが、近い将来、上野や浅草のような演芸場ができて、常時いろいろな演目が開催されるようになった暁には、若手の方々にとって狸寄席に出ることがステータスになることが理想です。売れて人気が出て東京の舞台に立ったときに、最初の舞台は札幌の狸寄席だったと言ってもらえたらうれしいなと。これからを担う芸人さんたちのための舞台づくりにも貢献していければという思いもあるんです。旗揚げ公演から寄席当日の会場運営には多くのボランティアスタッフの方々の力を貸していただきました。会場運営のボランティアスタッフは随時募集中ですので、ぜひ市民の力で狸小路に常設演劇場を作っていけたらと思っています。

(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。