500メーターズ

市民と取り組むアートを通じたまちづくり

自らもアーティストとして活動する傍ら、ボランティアによるアートマネジメントチーム「500メーターズ」の活動をコーディネートする高橋喜代史さん。市民とともにアートを通じたまちづくりに取り組む思いを伺いました。

アートに携わる楽しさを
人からまちへ広げたい

500メーターズ
顧問

高橋喜代史(たかはしきよし)さん

アーティストとして言語やコミュニケーションをテーマとする作品を制作する傍ら、一般社団法人PROJECTAのディレクターとして展覧会などのアートマネジメントを手掛ける。2012年より500m美術館の企画運営に携わり、2013年にボランティアによるアートマネジメントチーム「500メーターズ」を結成。アートマネジメントを実践的に学ぶ機会を広く市民に提供し、アートを通じたまちづくりに取り組んでいる。

500m美術館をボランティアで支える、縁の下の力持ち。

「500m美術館」は、地下鉄大通駅と東西線バスセンター前駅を結ぶ地下コンコースの壁面を活用したアートスペースで、年間を通して国内外のアーティストの作品を展示しています。これらの作品の搬入・搬出や展示スペースの設営、フライヤー配布などのお手伝いをしているのが「500メーターズ」です。僕は2012年から500m美術館の運営に携わることになり、初年度にアーティストユニット「Nadegata Instant Party」による展示を企画しました。彼らの作品はたくさんの人を巻き込みながら制作するスタイルが特徴で、札幌でも40人くらいの市民ボランティアが集まって企画は大成功でした。僕はもともとボランティアによるアートマネジメントチームを作りたいと考えていたのですが、この経験をきっかけに具体的な構想が見え始め、翌2013年に500メーターズが発足しました。メンバーは毎年春にホームページやフライヤーなどで募集しており、8〜9人のコアメンバーを中心に年々少しずつ増えています。学生や主婦、ライター、建築家など立場も年齢もさまざまですが、みんなアートに興味があって自分で企画するのが好きな人ばかりです。

自分たちで展覧会を企画し運営する。その経験が人を成長させていく。

500メーターズでは500m美術館の運営サポートのほか、毎年1〜3月に開催する独自の展覧会「500メーターズプロジェクト」の企画・運営も手掛けています。毎月ミーティングを重ねてアイデアを練り上げ、出展者と何回もやりとりしながら展覧会を運営するのは容易なことではないけれど、そこで得られる学びや成長は計り知れません。メンバー同士で自然とネットワークを構築し、僕が指示しなくても古株のメンバーがリーダー役を担ってくれたり、参加当初はアートとは無縁だったおじいさんがいつの間にか「マルセル・デュシャンの作品はさぁ…」と楽しそうに話すようになったり。環境が人を育てることを実感させられます。今年開催した「冬のセンバツ〜美術学生展」では14組の美術学生による作品を展示したところ、何と1点売れました。自分たちが考えた企画で作品が売れ、札幌の若い才能を発掘・発信する機会の創出につながった経験は、メンバーの大きな励みになったのではないかと思います。

アートに関わる人を育てることで、札幌のアートシーンを盛り上げたい。

500メーターズは2019年で6年目になります。ここから巣立ったメンバーの中には、これまでの経験を生かしてアートやクリエーティブの現場を支えている人や、まちづくり事業を手掛ける会社に就職した人もいます。もともとアートはアーティスト個人の思いに根差したものですが、アートに関心を持つ個人の思いが集まって500メーターズという活動が生まれ、そこで成長した人々が種となってまちの至る所でアートの花を咲かせていくことがとてもうれしく、頼もしく思います。この6年の間に札幌国際芸術祭や札幌市民交流プラザなどが誕生し、札幌市民にとって芸術文化がぐっと身近になりました。そうした中で500メーターズは、アートに関わる人を育てる場として機能し続け、札幌のアートシーンを盛り上げていきたいと思っています。

(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。