さっぽろアートエクスプローラー

子どもたちの自由な音楽表現をサポート

楽器が弾けなくても誰でも参加できる、即興音楽を中心とした子どもたちの芸術体験活動団体「さっぽろアートエクスプローラー」。スタッフと共に活動を運営・サポートする思いを代表の木村直子さんに伺いました。

子どもたちを開放する
枠にとらわれない表現を

さっぽろアートエクスプローラー
代表

木村直子(きむらなおこ)さん

札幌国際芸術祭2017「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」をきっかけに、2017年11月「さっぽろアートエクスプローラー」を設立。子どもたちが自由に音楽を表現する即興演奏の場をつくり、さまざまなアーティストをファシリテーターとして迎えるワークショップを開催している。

「札幌国際芸術祭2017」の感動をもう一度という思いから始まった活動。

「さっぽろアートエクスプローラー」の活動を始めたのは、札幌国際芸術祭2017で行われた「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」がきっかけ。これは、札幌国際芸術祭2017ゲストディレクターの大友良英さんがコンダクターとなり、小学生から高校生までの子どもたちを集めて結成されたオーケストラで、技術の向上や正確な演奏を求めるのではなく、楽譜は用いず、即興を演奏のベースとしていました。2017年8月27日には、札幌コンサートホールKitaraで公演を行い、その演奏は大きな反響を呼んだものです。「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」では、個性豊かな子どもたちの演奏に衝撃を受けました。それぞれが思い思いの音を出しているのに、一つにまとまって作り上げていく。みんなと合わせようと縮こまっていた子が、だんだんいい表情になっていく。演奏する子どもも、見る大人も、うれしくなるような体験でした。あの感動をもう一度という思いで始めたのが、「さっぽろアートエクスプローラー」の取り組みです。

楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくてもOK。自由に表現する「芸術探検家」たち。

アートエクスプローラーの名前は「芸術探検家」という意味。音楽だけに限らず、アートを探検、探求して感性を豊かにしていく。そんな思いを込めて、子どもたち自身が名付けました。普通、メロディーやリズムを楽譜通りに奏でたり、ハーモニーをきれいに響かせたり、音楽には正しい形がありますが、子どもたちがやっているのは既存の音楽の枠にとらわれない演奏。トランペット、バイオリン、ベース、ジャンベ、カズーといった楽器を演奏する子もいれば、熊よけの鈴や手作りの楽器、缶に玉を入れて鳴らす子もいる。楽器を弾けなくても、楽譜が読めなくても、誰でも参加OK。子どもたちは自分たちでやりたいことを話し合い、楽器作りをしたい、物語作りをしたい、詩を書いてバックで演奏したい…といったアイデアを出し合います。例えば先日行ったのは、"アーティストのオトナ"と一緒にお面を作って、それをかぶり、描いた絵に合う音を出すというテーマ。毎回、さまざまな形で自由に音楽と向き合い楽しんでいます。

みんな一緒だけど、みんな違って楽しめる。枠にとらわれない即興芸術体験。

昨年は、芸術体験ワークショップ「ヒト・オト・イロイロ」というイベントを4回開催しました。1回目は「障子紙アート&図形楽譜の即興演奏」、2回目は「音とダンスの即興」、3回目と4回目は「音にこだわる」がテーマ。毎回、さまざまな分野の専門家の方がファシリテーターとなり、子どもたちはテーマに沿った即興芸術体験を楽しみます。参加は、小学生から大学生・専門学校生まで誰でもOK。今年の開催はまだ未定ですが、新たなワークショップを展開していきたいと思います。子どもたちは今、コンダクターの大友良英さんをはじめ演出家・ディレクターの方たちに、自分たちで編集したビデオレターを送ろうと考えています。「札幌国際芸術祭2017」が終わっても継続して行っている自分たちの活動を知らせたいんですね。いずれは大友さんたちを札幌に呼びたいと思っているようです。今の世の中は、みんな同じ方向を向きがちで、枠からはみ出る人には苦しい部分もありますよね。「さっぽろアートエクスプローラー」の体験は、みんな一緒だけど、みんな違って楽しめる。自由な音楽により心が開放された子どもたちは、自主的に動き発言するようになり、元気になっていくんです。

(取材・文・編集 株式会社アウラ)
※2019年3月1日現在の情報です。