札幌地区子どもの本連絡会

本を通じて人と人が出会い、共にささえ合う子どもの読書文化

札幌近郊で絵本や児童文学など子どもの本に関わる人たちがつながり、ささえ合うネットワークでありたい。「全ての子らに本の楽しさを」を合言葉に、会員同士が情報交換をしながら子どもの本と読書文化をささえる想いを伺いました。

札幌地区子どもの本連絡会 代表 榊京子さん

札幌地区子どもの本連絡会
代表 榊京子(さかききょうこ)さん

元保育士。絵本の読み聞かせや紙人形劇、影絵、工作などの経験を活かし、図書館での読み聞かせや近所にあった家庭文庫(地域で子どものための図書を収集し、貸し出すサービス)活動にもスタッフとして参加。2004年に札幌地区子どもの本連絡会2代目代表に就任。アジア児童文学日本センター会員。

子どもの本に関わる人たちが交流しながら「本を読む楽しさ」を分かち合う場

―札幌地区子どもの本連絡会が発足したきっかけを教えてください

「札幌地区子どもの本連絡会(以下、地区連)」は、子どもの本に関する全ての人々が交流しながら子どもたちの読書普及活動に取り組むネットワーク組織です。1987年に行われた「北海道子どもの本連絡会のつどい札幌大会」をきっかけに、札幌以外にも恵庭や江別など札幌近郊で活動する人たちの連携を深め、情報交換や発信する場として1991年に誕生しました。その後、1998年に運営体制を整え、2000年には「連絡会のきまり」として規約を定め、活動を続けています。

―活動内容を教えてください

年1回の総会のほか、年4回隔月で児童文学や絵本など子どものための本の読書会(例会)を開き、意見交換や交流をしています。また、児童文学や絵本の作家を招いた講演会や読書文化に関する学習会を随時開催することでお互いに学び合い、学校図書館についての学習会や情報交換にも取り組んでいます。特に読書会は作品が生まれた動機や背景、込められた想いや考え方を作家から直接聞くことで、あらゆる方向から作品を味わい、理解を深められる機会となっています。さらに、年4回発行している会報「ジグソーパズル」では会員や会員外の方々との交流を図るため、さまざまな団体と協力して情報交換を行っており、発行を毎回楽しみにしてくれる方が多いことが励みです。その他にも、韓国絵本を中心に中国・台湾・モンゴルなどで出版された原書と翻訳本を150冊以上並べた「アジアの絵本展」を不定期に開催しています。そこではアジア各国の昔話の比較をはじめ、子どもの本を通じたアジアの交流に力を注いでいる方々を講師に招いたフォーラムも行っています。「アジアの絵本展」はこれまでに4回開催していますが、国別に原書と翻訳本をこれだけ多く展示しているのは、北海道では地区連だけかもしれません。

子どもの本に関わる人たちが交流しながら「本を読む楽しさ」を分かち合う場 (写真左)韓国絵本の翻訳者・大学教授の大竹聖美さんが韓国の絵本に描かれたお正月の晴れ着を展示
(写真右)アジア児童文学日本センター元会長のきどのりこさんが「アジア児童文学大会」の様子を紹介

子どもたちが本と出会う機会をみんなで「ささえ合う」ということ

―子どもの読書文化をささえる意義とは何ですか?

個人的な想いとして、文庫活動の紹介をしたいと思います。「文庫」とは、自宅などを開放し、子どものための図書を収集したり、貸し出す家庭文庫を指します。札幌での文庫活動は、1971年に広島から転居してきた山崎翠さんが開設した「なかよし文庫」から始まりました。「我が子や地域の子どもたちに良い本と出会わせたい」「文庫活動は地域の人とのつながりの中で新たな本や人に出会える子育て運動」という想いが広がり、見学に来たお母さんたちが地域で文庫を開設し、さらに1974年には6文庫で「さっぽろ文庫の会」や「図書館づくりをすすめる会」が発足しました。文庫では、選書や読み聞かせ、手作り遊びや季節ごとのイベントのほか、昔話絵本の比較研究、講演会、文庫運営や子どもの本の学習、図書館充実を目指す活動が行われました。1980年には41を数えた文庫も時代の変化と共にニーズの多様化によって減少し、1994年にはさっぽろ文庫の会は解散しましたが、今でも活動を続けている会もあります。高齢者が増えている時代だからこそ、逆に文庫のニーズが高まってほしいと考えています。また、子どもの読書文化は一方的に「ささえる」ものではなく「ささえ合う」ものだと地区連は考えています。子どもの本に関わる人たちのネットワーク組織だからこそ、本を通じて人と人が出会い、つながり、子どもの読書文化を共にささえ合っているのだと感じています。

「全ての子どもたちに本を読む楽しさを知って欲しい」という共通の想い (写真左)児童文学作家の重松彌佐さん(地区連会員)による絵本講座。絵本「バスていよいしょ」ができる過程を紹介
(写真右)高次脳機能障がい者を支援するNPO法人「Re~らぶ」の理事長、東藤れいこさんを招いた「ちょっと不思議な絵本の時間」の学習会

「全ての子どもたちに本を読む楽しさを知って欲しい」という共通の想い

―どんな方が団体に参加されていますか?

現在の会員は約30人で、子どもの本の「渡し手」「書き手」「読み手」の三者で構成されています。「渡し手」は学校教諭や図書館司書、児童会館などのスタッフのほか、読み聞かせや親子読書会のボランティア、昔話の語り手、地域で文庫活動や図書館をつくる活動をしている方など「子どもに本を手渡す人」ですが、子どもを対象とした活動以外にも、グループホームやデイサービスなどで紙芝居や昔話の読み聞かせ、ブックカフェを行っている方もいます。「書き手」は児童文学や絵本作家、子どもの本の書評や評論を書いている方です。「読み手」は子どもだけでなく大人も読み手であり、子どもの本を愛する全ての人を対象としています。また、「全ての子らに本の楽しみを」という想いから、障がい児教育に携わっている方もいます。

―「絵本講座」参加メンバーの声を聞かせてください

「児童文学作家の重松さんとお話ができ、機会があれば小学校にも来ていただけると聞き、みんなで感激して帰ってきました。良い出会いの機会をありがとうございます」「参加者全員が熱心に耳を傾け、聞き入っている様子に皆さん童話や絵本が大好きなんだと感じました」「あらゆるジャンルの方が会員なので、いろいろな話が聞けることが嬉しいです」という声が伺えました。

団体への参加方法

参加対象/どなたでも参加可能

申し込み方法/電話・メール・FAX・Facebookほか、イベントでも入会申込書を配布

活動頻度/年4回のイベントと年1回の総会、年4回の会報発行など

参加費用/年会費1,000円

一冊の本から受けとる「想い」をつなげ、出会いの場を広げるお手伝いをしたい

―今後の目標や夢などを教えてください

私たちはボランティアですが、本を通じたつながりをとても大事にしています。1冊の本に出会い、そこから受けとる言葉の大切さや重さから「子どもたちに紹介したい」「自分の手元に置いてじっくり読みたい」など、さまざまな想いが生まれます。その想いを話し合うことは他者への理解や登場人物である子どもたちの考え方への共感につながり、そこから社会や環境問題に話題が発展することもあります。地区連はそうした本を通じた出会いの場を広げるお手伝いをしたいと考えています。また、会員が主催する講演会などに協力しているほか、図書館や学校図書館の応援団でもあります。さまざまな情報を発信し、交流していく場として今後も活動を続けていきたいです。

札幌地区子どもの本連絡会(団体ページへ)

どさんこマーブルタウン実行委員会
■ 代表者 榊京子
■ 住所 札幌市豊平区美園8条2丁目2-23
札美マンション205
■ 電話 011-301-0192
■ FAX 011-301-0192
■ メール sdcc-sakaki@jcom.home.ne.jp
■ ホームページ http://chikuren.exblog.jp/
■ Facebook http://www.facebook.com/kodomobook/
今後の開催予定

2020年2月8日(土)13時~ブックカフェ「札幌YWCA壘(ルイ)」にて読書会「児童文学を語ろう」のほか、4月には絵本講座を開催予定。

取材を終えて

「アジアの絵本展」に中国人親子が訪れ、日本ではなかなか手に取る機会の無い中国の昔話の原書を熱心に母親が子どもに読み聞かせていたというお話が特に印象的で、絵本を通じて国を超えた交流を感じました。また、取材日は絵本講座が開催されており、児童文学作家の重松さんのお話を真剣な表情で聞く参加者や運営委員の皆さんの様子に、本の素晴らしさや子どもの読書文化を共にささえ合いたいという想いが伝わってきました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2019年10月16日現在の情報です。