交流と情報交換、切磋琢磨。ろう者が安心して暮らせる社会を目指して
耳が聞こえない方(以下、ろう者)の言語、手話によるコミュニケーションが近年見直されています。札幌市内の手話サークルの連携を図り、またさまざまな取組で市民にその魅力を伝えようと活動する、札幌手話サークル連絡協議会会長の宮本英行さんにお話を伺いました。
札幌手話サークル連絡協議会
会長 宮本英行さん
札幌西区手輪の会に所属。2017年度まで同会の会長を6年務め、2019年度より札幌手話サークル連絡協議会の会長に就任しました。普段は障がい者支援施設の厨房で料理人として勤務しています。音楽イベントなど新しい切り口で活動の範囲を広げています。
研修交流、情報発信、市民啓発を通じて手話サークルの活動をサポート
―設立のきっかけを教えてください
前身である札幌手輪の会の各区に置かれていた班が、地域に根差した活動をするために独立しました。その後1986年に地域を軸とした活動を札幌市全体に拡げるため、札幌手話サークル連絡協議会が誕生しました。現在各区には19の加盟手話サークルがあります。
―活動内容を教えてください
手話サークルとは手話を習う講習会ではなく、また同好会とも異なります。地域で暮らすろう者の生活、差別や不便さを知り、だれもが安心して生き生きと暮らせる社会を支えるための活動です。現在は公益社団法人札幌聴覚障害者協会と協力し、また札幌手話通訳問題研究会、北海道手話サークル連絡協議会と連携し、活動を行っています。大きなものでいうと、年に一度、札幌市内と近郊の手話サークルが一堂に会し「何のために手話を学ぶのか」をテーマにディスカッションや実践発表を行う研修交流会を開催しています。また、月間広報紙「たけとんぼ」の編集発行のほか毎年3月第1日曜日に開催される耳の日のイベントで手話の啓発活動も行っています。最近では楽曲に合わせて歌詞を手話で表現する手話コーラスを披露する依頼が増えていて、新しい啓発活動として取組んでいます。
(写真右)協議会の活動を発信する広報誌「たけとんぼ」を毎月発行。札幌市内各区の公共施設にて配布しています
手話サークルでの学びの機会、広く伝えたい
―団体に参加する魅力を教えてください
私は10年ほど前、友人に誘われて手話サークルに参加しました。当時の私は手話を身につける前で知識はゼロでしたが、身振り手振りでも伝えようとしていることが相手に伝わったときの喜びが忘れられなくて活動を続けています。人と人とのコミュニケーションですから、相手を尊敬し理解しようとするところに魅力を感じています。また研修交流会ではろう者やサークル員との交流を通し、また分科会などで学ぶことで普段気付かない聴こえない障がいを知る事が出来、サークル活動や日常でのろう者とのコミュニケーションに活かすことができます。
―運営はどのように行われていますか?
札幌市内の各区にある19の加盟手話サークルによって構成されています。各加盟手話サークルの代表者による役員6人、事務局員1人で、会費や補助金で運営しています。事務局では手話サークル入会希望者からの問い合わせに対応し、希望を聞いて加盟手話サークルの中から最適なサークルを紹介したり、加盟手話サークル間の連絡調整のほか、最近ではイベント参加の依頼が増え異種他団体との連携も事務局で行っています。
だれでも使いやすい視覚言語、コミュニケーションツールとしても魅力?
―どんな方が参加されていますか?
参加されている方の多くは、職場の同僚にろう者がいたりろう者のお客さんと接する機会がある方など、日常でろう者とコミュニケーションをとりたいという方です。また、意外にも言語学やコミュニケーションに興味があって参加される方も少なくありません。現在約450人の方が札幌手話サークル連絡協議会に加盟している手話サークルで活動しています。
―実際に手話サークルに参加された方の声を聞かせてください
友人に誘われて加盟手話サークルに入った学生からのアンケートでは「言語としての手話に興味があり入会しましたが、文化の違う、聞こえない方たちと関わることで世界観が大きく広がりました」とありました。また長くサークル活動を続けている方からは「手話は視覚言語。ちょっと離れていても大きな声を出すことなく相手と意思疎通ができ、誰でも使いやすい言語として捉える方もいますが、実は日本語とは異なる文化があり、言語として非常に魅力を感じます」という声をいただきました。
(写真右)研修交流会ではろう者を取り巻く変化に対応するため成果発表などを行い、加盟サークルの知識、意識を高めます
団体への参加方法
参加対象/札幌手話サークル連絡協議会加盟サークル員
申し込み方法/事務局までお電話ください
活動頻度/各加盟手話サークルによります。詳細は札幌手話サークル連絡協議会のブログをご覧ください
参加費用/年会費1700円
新しい切り口、やり方を取り入れながら、手話の必要性を市民に発信
―今後の目標を教えてください
閉鎖的な世界と思われがちですが、手話は言語でありろう者にとって命とも言えます。市民の皆さんにぜひその意味を、聞こえないとはどのような障害なのかを知っていただけるような取組を続けていきたいです。例えば2019年、キングムーでのユニバーサル音楽イベントの後援を通じ実行委員会に参加し、視覚的に表示(トイレ、喫煙室など)や、手話が見やすい様に照明の明るさの工夫、専門ブースで楽しむろう者と聞こえる方との手話通訳を行ったり、啓発活動としてイベント内でPRさせていただきました。今後も他団体と連携を取りながら新しい切り口、手法で手話をもっと広めたいですね。
札幌手話サークル連絡協議会(団体ページへ)
■ 代表者 | 宮本英行 |
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■ 住所 | 札幌市中央区大通西19丁目札幌市視聴覚障がい者情報センター2階 |
■ 電話 | 011-631-6747 内線292 |
■ FAX | 011-642-8377 札サ連宛 |
■ 活動時間 | 月火木金 13時~17時 |
■ ホームページ | https://ameblo.jp/sassaren/ |
取材を終えて
取材後に少し手話のことも教えていただき、手話に対する見方が変わりました。福祉は支援者側からのはたらきかけで成り立つと考えがちですが、実は双方向の思いやりがあってこそ成り立つものであり、人と人はお互いがささえ合う存在であると改めて気づかされました。
(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2019年10月16日現在の情報です。