「24時間で60kmを歩く」という非日常体験から歩く楽しさを伝えたい
歩くことが好きな学生たちがささえるイベント「夜のピクニック」。24時間で60kmという距離を歩く中で、普段は気付かない景色やゴールした時の達成感、そこで生まれる参加者同士の交流など歩く楽しさを伝える活動への想いを、僕らの歩行祭実行委員会運営メンバーの寺嶋啓太さんに伺いました。
僕らの歩行祭実行委員会
寺嶋啓太(てらしまけいた)さん
北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科2年。もともと歩くことが好きで、大学入学前に恩田陸の著書「夜のピクニック」を読んでいたこともあり、大学1年の新入生歓迎会の際に僕らの歩行祭実行委員会の活動を知って、怖いもの見たさから参加を決意。運営メンバーとして活動しています。
学生が24時間で60kmを歩く「夜のピクニック」を札幌でも行いたい
―発足したきっかけを教えてください
映画化もされた恩田陸さんの著書「夜のピクニック」は、茨城県の水戸第一高等学校で実際に行われている「歩く会」という行事が元になっています。その卒業生である初代代表が北海道大学に進学し、「札幌でもぜひ歩行祭を行いたい」という想いから2012年に「僕らの歩行祭実行委員会」を立ち上げました。以降、毎年のメインイベントとして「夜のピクニック」を行っています。
―「夜のピクニック」とはどのようなものですか?
毎年6~7月、大学生、大学院生、専門学校生を対象に「100人で24時間かけて60kmを歩く」というコンセプトで行っているイベントです。朝9時に北海道大学を出発し、その年によって石狩方面や小樽方面などルートは変わりますが、再び大学に戻るまでの総距離60kmを24時間で歩きます。個人の歩くペースや運動経験などによって参加者はグループ分けされ、それぞれ班ごとにのぼりを持って歩くのですが、区間によって班ごとに歩く時間、個人で歩く時間などを設けているため、参加者同士が歩きながら交流を深めることができます。2~3時間ごとに大きな公園などで食事や休憩の時間をとっており、折り返し地点では地域の公民館やコミュニティセンターなどの施設を借りて、参加者が各自休んだり仮眠をとれるよう休憩場所を確保しています。「夜のピクニック」は2019年で8回目を迎えましたが、北海道大学を中心に藤女子大学や北星学園大学などの学生を合わせて毎年約70人が参加しており、その他にも20kmの距離を約20人で歩く「新年度春のピクニック」や「ミニ夜のピクニック」など手軽に参加できるサブイベントを年に4回開催しています。
普段は意識することのない「歩く」が「特別」になる非日常体験
―「夜のピクニック」の魅力は何ですか?
小学校や中学校、高校と違って大学は体育の授業などがないため、運動部に入らない限り運動する機会自体がありません。「夜のピクニック」はゴールを目指すという目的こそありますが、その根底には「歩く楽しさを知ってほしい」という願いがあります。電車やバス、車、自転車などの移動手段と比べ、歩くことははるかに速さや利便性が劣りますが、例えば電車の移動の際はスマートフォンを見たり本を読んだりして周りをあまり見ないことが多いのに対し、歩く際には必然的に周りを見ることになります。イベントで長時間歩くうちにいつもは気付かない風景が目に飛び込んできたり、普段は接することのない人と話すきっかけが生まれたりという楽しさがあります。当然、歩く中では苦しい局面もありますが、「24時間通して60kmの距離を歩く」といういわば非日常的な体験によって、普段は無意識にしている「歩く」という行為が「特別」に感じるようになります。イベントを通じて参加者にも歩くことの特別さを実感してもらえたら嬉しいですね。
(写真右)24時間をかけて60kmを歩くという非日常体験の中で味わう達成感や周りの人との交流は特別に感じられます
自分たちが好きだからこそささえられる「歩く楽しみ」
―活動にはどんな方が参加されていますか?
運営メンバーは北海道大学や藤女子大学などの学生約20人です。小説や映画の「夜のピクニック」が好きだったり、友人に誘われたりときっかけはさまざまですが、基本的に全員歩くことが好きで参加しています。
(写真右)メインイベント前には班ごとにのぼりを手作りするなど、参加者同士が交流する機会もあります
―運営するなかで大事にしていることはありますか?
参加者に歩く楽しさを知ってもらう上で、特に重視しているのは安全面です。毎年、メインイベント前には道路状況や休憩場所の下見を兼ね、リハーサルとして運営メンバーは全行程を歩いて確認します。途中で休憩する公園や折り返し地点で使用する施設の使用許可を事前にとり、参加者が快適に過ごせるよう配慮しています。また、休憩地点では運営メンバーが参加者に声をかけ、湿布や救急箱でのケアを心がけているほか、もしもの事態に備えて車や民間救急車を手配しているため、当日は救急スタッフや看護師に常時付き添っていただくなど万全の体制で臨んでいます。それだけに参加者が無事に完歩することができ、ゴール地点で疲労の中にも達成感を味わう姿を目にした時には、運営としてささえることができた喜びでいっぱいです。なお、メインイベント前の参加者交流会では運営メンバーから諸注意を伝えるだけでなく、自己紹介や班ごとに当日持って歩くのぼりを自分たちでつくるなど、参加者が当日できるだけ楽しめるよう事前に交流することでお互いに距離を縮められる機会を設けています。また、メインイベントでは参加賞のタオルや完歩した人に渡す缶バッジなどのグッズを作っているのですが、運営メンバーでデザインが得意なチームが毎年デザインを考えていて、毎年参加して集めてくれる参加者もいることが嬉しいです。
―参加者の声を聞かせてください
「2018年に、メインイベントの「夜のピクニック」に初めて参加し、運営メンバーが本当に楽しそうに活動している姿を見て、イベント直後に委員会に入ることを決めました。実際に60kmの距離を歩くというのは想像以上にきつかったのですが、歩く中でいろいろな人と話をして交流できたことは自分にとって大きなプラスとなり、とてもよかったです」という声をいただきました。
参加方法について
参加対象/学生であればどなたでも参加可能
申し込み方法/HP、Facebook、Twitter
活動頻度/毎年6~7月に行うメインイベントの他、サブイベントを年4回開催
参加費用/会費なし(イベント参加の場合は別途参加費)
より多くの人に歩く魅力を伝え続けたい
―今後の目標や夢などを教えてください
もともと「学生100人で60kmを24時間で歩く」をコンセプトにしているため、まずは参加者を100人まで増やしたいというのが目標です。そして、さらに多くの方に歩くことの魅力を伝えていくことができればと考えています。
僕らの歩行祭実行委員会(団体ページへ)
■ 代表者 | 寺嶋啓太 |
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■ 住所 | 非公開 |
■ 電話 | 非公開 |
■ FAX | 非公開 |
■ メール | yorupic7@gmail.com |
■ ホームページ | http://yorupic.info/ |
https://twitter.com/yorupiku_h | |
https://www.instagram.com/yorupic7/?hl=ja |
取材を終えて
24時間で60kmを歩くことがどれだけ大変か容易には想像できませんが、恩田陸の著書にある「歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」という言葉や参加賞のタオルを3年分持って参加する学生がいるということからも、歩いた人にしかわからない貴重な体験となることが伺えました。歩くことへの想いの強さはもちろん、イベントをささえる運営メンバー自身が楽しんで活動していることが伝わってきました。
(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2019年11月7日現在の情報です。