札幌建築鑑賞会

札幌の魅力再発見。歴史から紐解く地域資源

まちづくりは街歩き。「わが街の文化遺産の再発見」をテーマに、札幌市内の歴史的建物を対象にした街歩きや写生会などを企画している「札幌建築鑑賞会」の代表、杉浦正人さんにお話を伺いました。

札幌建築鑑賞会 代表 杉浦正人さん

札幌建築鑑賞会
代表 杉浦正人(すぎうらまさと)さん

地域史、地誌研究者。建物を巡りながらその地域の歴史や物語を採取する街歩きの達人として活動する杉浦さん。ブログ「札幌時空逍遥」の執筆活動やテレビ番組での街歩き案内役など、歴史や建物をテーマに地域資源を発信されています。

札幌に、まだこんなところがあったんだ!

―活動のきっかけ、立ち上げの経緯や想いについて教えてください

設立は1991年ですがきっかけとなった出来事はその前年、北海道における初期西洋建築の専門家の越野武先生(現北海道大学名誉教授)が講師を務める「建築観賞入門」という特別講座です。その講座の中で、今の創成川イーストを散策しました。当時の創成川東側といえば札幌中心市街地の開発から取り残された場所で住宅、商店、工場が混在するまさにインナーシティエリアでした。越野先生の案内と共に散策し、時代の移り変わりを静かに物語る古建築に魅せられ、まだまだ知られていない札幌の魅力をもっと掘り起こそうと、この会の設立に至りました。

―団体に参加する魅力を教えてください

自分たちが住み、暮らしている街の歴史を探ると、さまざまな物語が埋もれています。そこにスポットを当てることで街の新しい魅力が見えてきます。普段何気なく見ている古い建物も、そこで商業や工業、人々のなりわいや暮らしがあったからこそ。自然風土や産業などとも密接に関係してきます。そういった再発見を通じて、札幌という街がもっと好きになるし、もっと多くの人にその魅力を伝えたくなるでしょう。

札幌に、まだこんなところがあったんだ! (写真左)15年かけて作成した軟石建物マップ。同会の会員の有志30人が札幌市内でローラー作戦を展開。市内全域を歩いて調査しました
(写真右)同会が発行する会報誌。表紙は会員による写生会の作品です。見学会報告や参加者の声やトピック、今後の予定などが網羅されています

建物は使われてこそ。永く使って歴史を紡ぐ

―札幌の魅力を伝える活動の意義を教えてください

何気ない景色に価値を吹き込む作業といえばおこがましいですが、景色に歴史の物語を重ねることで地域の資源や魅力が浮き上がってきます。古きよきものに目を向けると歴史建築を保存し、使い続けようとする人が増えてきます。手を加えてリノベーションし、レストランやカフェにしようとする人が現れるかもしれません。建物はやはり人々に使われてこそ幸せなのだと思います。私たちの活動を通じて、多くの人が地域の魅力に気づき、みんなが街の魅力を語るような郷土愛につなげていきたいですね。

―活動内容を教えてください

雪のない時期に、歴史建築や街道の見学会「大人の散歩」や写生会を行い、冬は室内での講演会も行っています。また、年に3回ほど会報誌「keystone(きーすとーん)」を発行し、約730人の会員にお届けしています。現在、会報誌の制作や行事の企画運営は8人の有志ボランティアスタッフによって行われています。

埋もれた歴史の痕跡を探す、マニアック散歩!? (写真左)「札幌軟石のふるさとを歩く」と題した2019年の夏の「大人の遠足」。界隈に残る歴史と人々の営みの痕跡を訪ねて歩きました
(写真右)2016年に札幌市中央図書館で開催した「わが街の文化遺産 札幌軟石展―札幌は“石の街”だった!?」。北海道遺産選定につながる取組となりました

埋もれた歴史の痕跡を探す、マニアック散歩!?

―「大人の遠足」にはどんな方が参加されていますか?

若い方もいますが60代から70代が多いですね。一級建築士や大学教員など専門家もいますが、ほとんどは街の歴史を探訪してみたいと好奇心で興味を持った一般の方です。大人の遠足は毎回テーマを設けて行うのですが、テーマとなった場所で育った方々も興味深い様子で参加されています。知っているつもりの場所で新しい発見があると嬉しいですよね。また、今後の大人の遠足では全国の他の文化推進団体との交流にも力を入れていきたいですね。現在は日本遺産にもなっている栃木県宇都宮市の大谷石の魅力を発信している「宇都宮市大谷石文化推進協議会」との行事の相互参加を進めています。

―実際に「大人の遠足」に参加された方の感想を教えてください

参加者からは「ブラタモリ顔負けの有意義な旅」「故郷を郷土誌の目線で見ることで大切なことに気づかされました」「なにげなく通り過ぎていた街が、急にスポットライトを浴びたような景色に見えてきました」という感想が寄せられました。何気ない景色に歴史の物語を重ねることで新しい景色が見えてくることに皆さん喜ばれます。

団体への参加方法

参加対象/どなたでも参加可能

申し込み方法/メール、FAX、ハガキ

活動頻度/見学会(年2回)、写生会(年3~4回)、講演会(年1回)を行っています

参加費用/会費なし。行事のつど参加費を集めるほか1~2年に1回、寄付を募ります

知的好奇心を満たすツーリズムに昇華

―今後の目標を教えてください

2018年、札幌軟石は北海道遺産に選定されました。札幌軟石と建築物の魅力をもっと多くの人に発信したいと思います。埋もれた資源にこそスポットを当てて、札幌の魅力再発見につながる深堀りしたツアーを行ってみたいですね。これまで編集したマップやパンフレットなどをまとめて冊子にするなどして、札幌市民だけでなく北海道内外の人々に札幌の隠れたサイドストーリーを知ってもらえるような取組もしていきたいです。

札幌建築鑑賞会(団体ページへ)

札幌建築鑑賞会
■ 代表者 杉浦正人
■ 住所 札幌市北区北8条西3丁目市民活動サポートセンターレターケースNo.231
■ 電話 011-895-0082
■ FAX 011-895-0082
■ 活動時間 お問い合わせください
■ メール keystonesapporo@yahoo.co.jp
■ ホームページ https://ameblo.jp/keystonesapporo/
■ Facebook なし

取材を終えて

街の歴史を知ることで、住んでいる街の風景が違って見えてくることを街歩きの達人から学びました。私も達人たちの解説を聞きながら、車や自転車ではなく歩く速さ、歩く目線で散策し、自分の暮らす街を見てみたいと思いました。

(取材・文・編集 株式会社Mammy Pro)
※2019年10月16日現在の情報です。